断食について調べていると、「宿便」という言葉を目にします。
 
概ね「腸のひだの間に残っている、排出されない便」といった主旨で説明されており、「断食で宿便を排出して腸をきれいに」と続くわけです。


 
このコンテンツでは、宿便の有無などについて考えてみます。

宿便は嘘?管理人の考えは

断食の実践者、プロ野球読売ジャイアンツの上原投手も「断食をしたら、真っ黒な便が出た。これが宿便かと思った」と言っていたと記憶しています。
 
しかし同時に、「宿便など無い!」という意見が多いのも事実です。
 
まず、上で書いたような意味での「宿便」という言葉は医学用語にはありません。
 
医学記事で「宿便」と使われるときは、いわゆる便秘で長く腸に残った便を指す、「滞留便」とも呼ばれるものです。
 

 
宿便はないと主張する根拠として

腸はぜん動運動をしているので、ある箇所が山になったり谷になったりしている。つまり、谷間に便がたまりっぱなしになることはない。

というものがあります。
 
その他にも

腸の内部では常に分泌物が出ており、また内部組織は皮膚のように代謝しているので便が付着し続けていることは無い。

といった指摘もあります。
 
それでは私はどう考えているかというと、冒頭で挙げたような意味での「宿便」は無い、と考えています。
 
というのは、私がいままで読んだ、腸や食物繊維、大腸がんなどの資料・記事の中には、いわゆる「宿便(冒頭の意味の)」を危険因子として挙げたものはほぼ記憶にないからです。
 
例えば「大腸がんを予防しよう」という趣旨の記事の中に、「そのために便秘を解消しましょう」との記述はあっても、「宿便をなくしましょう」というのは私が見た限りではありません。
 
「宿便」という言葉が登場するのは、あくまで「宿便」がメインテーマの資料だと思うのです。
 
よって、宿便というのはあやしいかな?というのが私の意見です。

黒いゴムみたいな画像はホントに宿便?

以前、私のメルマガ読者のF様から頂いたメールにアメリカ・バーナード・ジェンセン医学博士著の「汚れた腸が病気をつくる(Amazon・レビュー多数あり)」という本が紹介してありました。
 
その中に「宿便の写真」が掲載されているそうです。
 

 
そこで、似たような写真がウェブ上に公開されていないかなと、根性で捜しました。
 
すると、それらしい写真があったのです!
 
「宿便」と訳していいものかは定かではありませんが、おそらくニュアンスとして一番近いものの写真です。
 
画像説明の概略は

腸内洗浄によるこれらの排出物は、ゼリーからタイヤゴムくらいまで硬さに幅があり、色も透明からタール状の色まである。腐敗物の臭いがする。

ということになる思います。
(管理人より:画像が無いので、この描写で想像をお願いします)
 
こんなのが体内にあるのでしょうか?個人的にはちょっと怪しいと考えています。
 
大腸憩室炎が非常に重篤な症状になることがあるように、この写真のような物体がずっと腸の中にあったらとても普通に生活などできないと思うのです。
 
読者の「なけな」様から頂いたお便りには「検査の時にカメラで見た大腸の壁はツルツルだったので便がこびりつくとは考えづらい」旨のお話がありました。
 
私も同じような考えを持っています。
 
ただ、私はごく小さい便の残りカスみたいなものはあってもおかしくないと思います。
 
イメージとしては口の中に残る歯垢や膿栓(俗に言うくさい玉)に近い感じで。「腸の中は隅からすみまでツルンツルン」という方がちょっと不自然な気がしますし。
 
そういったものが腸内に増えると、確かに健康にはよくないでしょう。
 

 
では上の写真は何だったのでしょうか?(あくまで私の意見です)あれがもし便であれば、便秘の便ではないかと。
 
「一週間出てない」といったケースでは、ああいった便になるような気がします。
 
形がかなり不自然ですけど。「健康で、普通に便通があるにもかかわらず、慢性的にこびりついている便」が上の写真のようなものであるとは私は考えていません。
 
いずれにしろ、結論としては「お通じは良くないとダメ」ということです。
 
「宿便」は、あくまでイメージとして、「あんなの溜めこんでたら絶対健康に悪いよね」という戒めとして使ってはいかがでしょうか。

甲田医師の「宿便が溜まる条件」胃腸に負担をかける例として

以上お知らせしてきたように、私はいわゆる「宿便」は無いと考えています。
 
便秘により、長いこと腸に居座っている便が一番近いのかなぁ、という意見です。
 

 
ここで、少食健康法で有名な甲田光雄氏の著書「少食の力」を紹介します。
 
甲田医師は、この本の中で「宿便が停滞する条件」を挙げています。

宿便とはいかなるものか?
 
それは、
 
「胃腸の処理能力を超えて負担をかけつづけた場合、腸管内に渋滞する排泄内容物、これを総称して宿便という」
 
たとえ食べすぎをしなくても、胃腸の処理能力が衰えた場合にも、宿便は停滞します。
 
たとえば、
 
(イ)運動不足がつづいた場合
(ロ)睡眠が充分にできない(徹夜など)
(ハ)水分の摂取量が少ない場合
(ニ)食塩の不足がつづいた場合
(ホ)食物繊維の摂取量が少ない場合
(ヘ)心配事がつづいた場合
(ト)粉食ばかりつづけた場合
 
以上の原因で宿便がたくさん停滞してくると、いろいろな症状が心身に現れてきます。
 
たとえば、
 
(イ)疲れやすい
(ロ)身体がだるく、昼間でも眠い
(ハ)頭が重く、痛い、記憶力が悪くなった
(ニ)肩が凝る
(ホ)手足がよく冷えるようになる
(ヘ)気分がイライラして気が短かくなる
(ト)取り越し苦労をよくするようになる
(チ)暑さに弱く、また寒さに弱い
(リ)スタミナが次第に落ちてきて根気がない
(15~17ページ)
 

宿便は無いと言いつつ、なぜ紹介したかというと、内臓に負担をかける例と、それによる症状としてわかりやすいと考えたからです。
 
私としては、
 
・アルコールをとりすぎる
・大食が習慣になっている
・夜遅くもしくは寝る前に食べる
・冷たい物を続けて摂取する

 
あたりも、負担をかける要素として追加したいところです。
 
宿便については、「?」と感じる部分もありますが、この本の著書、甲田医師が主張する少食については大いに賛同いたします。
 
甲田医師のその他の本も一読されてみてはいかがでしょうか。