狂犬病はいまの日本では根絶されていますが、海外との交流が盛んな現在は日本以外の国で感染する確率はゼロではありません。
実際に、外国で感染する例は報告されています。
このコンテンツでは狂犬病の症状や、日本・外国での狂犬病事情、感染例をまとめています。
狂犬病とは 症状や致死率
狂犬病は感染した犬に噛まれ、傷口からウイルスが体内に侵入します。
噛まれるだけでなく、皮膚の傷口をなめられる、あるいは口や鼻をなめられてそれらの粘膜から感染することもあります。
「狂犬病」という名がついていますが、感染源は犬だけではありません。ネコ、キツネ、コウモリ、リス、アライグマといった動物からも感染します。
潜伏期間は傷の場所によって違い(傷の場所が脳から離れるほど長くなります)、2週間から数ヶ月です。例外的に7年間という潜伏期間の例もあります
症状は発熱、頭痛、嘔吐に始まり、不安感、幻覚、恐水発作(水を怖がるため手を洗えない、水を飲むのが苦痛といった症状)、風を怖がる恐風発作、筋肉の痙攣や緊張といったもので、犬の遠吠えのようなうなり声を上げ、大量のよだれを流して昏睡、呼吸麻痺が起きて死に至ります。
人間の場合、発病したら死亡率は100%ですが、狂犬病の犬に噛まれてすぐにワクチンを注射すれば助かります。
発病しても回復した例が世界にこれまで数例あるものの、まず助からないと考えておくべき病気です。
「最も致死率が高い病気」としてエイズと共にギネスブックに記録されています。
日本と世界の狂犬病事情 フィリピンや中国 インドネシア
日本では約50年間、狂犬病は発生していません。1957年に広島県で狂犬病の猫が発見されたのが最後です。
海外で感染し、国内で発症した例はあります。
06年に日本国内で狂犬病により2人の男性が死亡しました。国内で狂犬病の死者が出たのは36年ぶりの出来事でした。
男性2人はいずれも同年8月フィリピン滞在中に犬に噛まれており、11月に発症しています。
狂犬病の無い国は日本の他に
に限られており、世界中では毎年約5万人が狂犬病で命を落としています。
2005年現在、中国での感染症死亡率1位は狂犬病によるものです。
タイ、インド、フィリピンでも狂犬病は感染症での死亡率の上位を占めています。
日本人に人気の観光地、インドネシアのバリ島でも狂犬病が広がっているとの報道がありました。
2008年11月から2010年8月までに死者数は78人に達しています。
何でもバリ島には約60万匹の犬がいて、そのうち約70%が野犬なのだそうです。これだけ野犬が増えたのは、宗教的な理由があります。
中国やバリ島に限らず、海外では動物とむやみに接触せず、また感染症対策も万全にしましょう。
中国の狂犬病事情 非人道的対策も
05年4月の中国衛生部の発表によると、04年中国で伝染病により死亡した原因の第1位は狂犬病だそうです。04年だけで死亡者が2651人出ました。
中国では数億頭の野犬が生息しているとされ、ペットとして飼われている室外犬も放し飼いが一般的です。そのため毎年およそ3千人が狂犬病で死亡しています。
北京在住の日本人が青空市場で子犬を購入して狂犬病で死亡するという症例も起きています。
中国の青空市場での犬や猫などの購入は避け、犬や猫を見ても触ったり、えさをあげたりしないことが大切です。
中国政府も狂犬病撲滅に力を入れています。
しかし06年7月の雲南省では野犬のみならず、ペットや予防接種済みの犬までもが狂犬病撲滅の名目で撲殺されました。
飼い主の目の前で殺される例も多数あり、あまりにも非人道的なやり方のために世界中から非難の声が上がりました。
中国では、狂犬病用として出回っているワクチンにもニセモノが非常に多く、病院の対応にも不信感を抱いている一般の国民が多いそうです。