健康情報をよく目にしているなら、「ヒジキはヒ素を含み発がんリスクがある」とのイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。

この件を最初に主張したのは、イギリス食品規格庁(FSA)です。

毒性のある無機ヒ素 日本人はひじきからの摂取が多い

2004年にFSAは「ひじきには無機ヒ素が多く含まれていることがわかった」との調査結果を発表しています。
 
ヒ素にはヒ素単体とヒ素化合物があり、ヒ素化合物の中には炭素を含む有機ヒ素と、炭素を含まない無機ヒ素があり、毒性が高いのは無機ヒ素のほうです。
 
無機ヒ素を短期間で大量に摂取すると、発熱や下痢、おう吐などの症状が出ます。
 
また、ヒ素汚染された井戸水を飲用していた人や、仕事などで高濃度のヒ素と接触していた人は、肺がん、膀胱がん、皮膚がんのリスクが高いことがわかっています。
 

 
実は無機ヒ素を含む食品はひじき以外にもあるのですが、日本人はひじきからの摂取量が突出しています。
 
こうした話を聞くと「ひじきを食べて大丈夫?」と心配になるのは無理もないのですが…

日本の研究 喫煙する男性はヒ素の影響あり ひじきはしっかり洗えばOK

日本の国立がん予防センターが、無機ヒ素を含む食品の摂取量と発がんの関連を、およそ11年間かけて追跡調査しました。
 
その結果、無機ヒ素を多く摂取したグループで、喫煙習慣のある男性の場合、肺がんを発症する率が有意に高かったのです。
 
明確な理由は分かっていませんが、喫煙者が無機ヒ素を摂取すると、ヒ素の代謝に関わる「グルタチオン」という抗酸化物質が肺で消失することが確認されています。
 
喫煙者は無機ヒ素の毒性を受けやすいと推測できるのです。
 
この研究では、その他のがんとの関連は見られず、女性は男性ほど差がありませんでした。
 
今後の研究を待つ必要はありますが、男性の喫煙者でなければ、ヒ素の影響はそれほど気にする必要はない、と言えそうです。
 

 
国立がん研究センター がん予防・健診研究センターの津金昌一郎センター長は、「乾燥ひじきを水で戻し、よく洗えば、ヒ素の大半は除去できる」としています。
 
そしてひじきはそれほど大量に食べる食品ではないので、仮にヒ素が含まれていても体におよぼす影響は極めて小さいと考えられます。
 
ひしぎは鉄分やミネラルの補給源として優れた食材です。
 
ヒ素のリスクを気にして全く食べないよりも、調理法を工夫して安全性を確保し、適量食べるほうが栄養摂取の面から考えると有効ではないでしょうか。