「食後すぐに運動すると消化に良くない」という話を聞いたことはないでしょうか?
 
食事をすると内臓に血液が集まりますが、運動でその血液が全身に循環するので消化が妨げられてしまう、という理屈です。

私くらいの年代の人間には「常識」といってもいいくらいよく知られた健康知識です。
 

 
しかし、運動の程度によっては健康に良いのかもしれません。
 
確かに、食後すぐランニングをするのはNGでしょうが、ちょっとした運動であれば、血糖値の上昇を防いでくれるようなのです。
 
このコンテンツでは、この件について雑誌「壮快」2017年12月号(Amazon)134~135ページを参考にしています。

食後5分以内に運動OK 消化は問題ない?

この「食後すぐ運動」は医療の現場でも実践されていて、銀座泰江クリニックの泰江慎太郎院長は糖尿病の人には
 
食後5分以内につま先立ち
 
を勧めています。
 
これまで、糖尿病患者には、食後1時間ほど経ってから運動するのが良い、と勧められてきました。しかし最近は、食後5分以内に運動するべき、という説が注目されています。
 
これは「食べてすぐ」と解釈しても問題ないですよね?
 

 
最新型の血糖測定器を使った調査の結果、食事から15分後には血糖値が上昇し始めることがわかりました。
 
つまり1時間も経ってから運動しても、すでに血糖値は上がっているため、運動の意味がなくなってしまうのです。
 
泰江医師は

食後に運動を始めるのが早ければ早いほど、血糖値の上昇が抑制される。

としています。
 
とはいえ、やっぱり消化に良くないのでは?という疑問は起きないでしょうか?
 
この点について泰江医師はこう説明しています。

これまでは、食後すぐに運動をすると、おなかに集まるべき血液が筋肉で使われてしまうため、消化が悪くなるといわれてきました。
 
しかし、この点についても考え直されています。
 
筋肉に血液が使われることで、血流が悪くなった胃腸の運動は緩やかになります。
 
つまり、糖の吸収速度が遅くなり、血糖値上昇が抑制されると考えるようになったのです。

むしろ「内臓以外に血液を回す」のを目的に運動するのです。
 
あえて消化を妨げる、とも言えるのではないでしょうか。それにより血糖値が上がるのをゆるやかにするわけです。

食後すぐにやる おすすめの運動と効果を上げるポイント

それでは、具体的にどんな運動をすればいいのでしょうか?
 
泰江医師は患者さんに
 
・つま先立ち
・階段の上り下り

 
といった、下半身の運動を勧めています。
いずれも比較的大きな筋肉を活動させます。
 
つま先立ちは食後5分以内に、30回を目安に行いましょう。余裕があればさらにもう1セット、食後以外の時にも行えばさらに理想的です。
 
泰江医師は、糖尿病予防を目的とする運動に関して、以下のようなポイントを挙げています。

・ひとつの筋肉に特化した運動を行うほうが、複数の筋肉を使った運動よりも効果が高い
 
・長時間の運動を1日1回行うよりも、短めの運動をこまめに繰り返すほうが糖尿病には効果的

 
「血糖値スパイク」を防ぐのにも、もちろん効果的です。
 
血糖値スパイクはそれ自体が血管を傷つける現象であり、放置すれば動脈硬化が進みます。
 

 
糖尿病を防ぐためには、食後安静にしておくのは必ずしも正解ではないようです。
 
「食べたらすぐに走る!」なんて意気込む必要はありませんが、食べたからといってジッとせず、何らかの活動をするのはむしろ推奨されるのではないでしょうか。
 
私は個人的に、糖尿病を「絶対防ぎたい病気」としているので、今後は食後意識して体を動かしてみようと思います。