音楽療法の歴史は古く、古代ギリシャのピタゴラスは音楽の持つ効果についてすでに言及しています。
 
第二次世界大戦ではアメリカの野戦病院に音楽療法がとりいれられていました。
 
科学的かつ医学的な研究が進んだのは、1950年にアメリカで音楽療法協会が設立されてからです。

日本で研究が本格的になったのは90年代に入ってからで、2001年には音楽療法学会が発足しています。
 
その後、医療やリハビリテーションで認定を受けた音楽療法士が活躍するようになりました。
 
音楽療法には、大きく分けて二つあります。
 
患者本人が音楽を演奏したり、歌を歌ったりして治療を進める「能動的音楽療法」と、音楽を聞かせることで治療を進める「受動的(静的)音楽療法」です。
 
受動的音楽療法を広く解釈すれば、一般の人も日常生活で実践していると言えるかもしれません。
 
音楽療法として音楽を聞くときのポイントは、目を閉じて聴くことです。視覚を遮断して、聴覚をより敏感に働かせるためです。
 
早い人であれば10分ほどで効果が表れてきます。血圧や心拍数が正常値に近づき、免疫の要であるNK細胞が活性化します。(好きな音楽を聴くと血流が増加するとの調査結果もあります。下の記事を参照して下さい)
 
唾液の量も増えてきます。音楽を聴き始めて30分後には唾液の量が1.2~2.2倍にも増えるという報告もあります。
 
唾液には、免疫物質や、インシュリンの働きをするホルモンなど、体調を整える物質が含まれているので、健康増進に役立ちます。

好きな音楽は血流を促進する

自分の好みの音楽を聞くことで楽しく心地良い気分になると、血液の流れが良くなるそうです。
 
08年の11月の「米国心臓協会」で報告された、メリーランド大医学部予防心臓学部主任・マイケル・ミラー準教授率いる研究チームの調査により明らかになりました。
 
研究チームは、健康で喫煙習慣の無いボランティア10人(平均年齢36歳)に、実験の最低二週間前から好みの音楽を聞かないようにしてもらいました。
 
その後、各自が楽しいと感じる音楽を聴いてもらい、血流量を計測しました。
 
すると、楽しい音楽を聴いた後は被験者の上腕の血管が26%も拡張したのです。逆に、不安を感じる音楽を聞いた後は血管が6%収縮しました。
 
血管が拡張すると血圧が下がり、血管や心臓への負荷が小さくなるので循環器には好ましいと言えます。逆に血管が収縮すると血圧が上がるため、血管や心臓には良くありません。
 
この研究チームは05年に笑いと血流に関する調査も行っています。笑うと血流が増え、楽しい音楽を聴いたときと同様に心臓・血管に好ましい影響を与えるのです。
 
「笑う門には福来る」というのは開運的な意味合いだけではなく、健康面でもどうやら正しいことのようですね。
 
「音楽鑑賞」という趣味が今後も無くなることがないのは、人間の身体が健康によいことを無意識に求めるからかもしれません。

癒しのポイント「同質の原理」とは

最近は「心を癒すための音楽CD」などが数多く市販されており、「ヒーリングミュージック」というジャンルはすっかり確立された感があります。
 
「ヒーリングミュージック」に限らず、自然の音や自分の好きな音楽で心が癒されたり勇気付けられたりすることは多いでしょう。
 
心を癒すために音楽を聴く際、大事なポイントとして「同質の原理」というものがあります。
 
この原理に基づいて、「現在の自分の心境と同じ雰囲気の曲を選ぶこと」で癒し効果を上げることができるのです。
 
「楽しい時は明るくウキウキするような曲、悲しい時は静かで淋しげな曲」ということですね。
 
少し前に「失恋した時は中島みゆきさんの歌を聞く」という話を聞いたことがあります。これこそまさに「同質の原理」を実践しています。
 
この原理を発見したのは米国のアルトシューラー博士で、1940年代に精神科医として働いていた際に「患者の心理状態と似た音楽をかける方が患者の反応が良くなる」と気づいたのです。
 
「癒し」が必要なのは心が落ち込んでいる時、悲しい時が多いでしょう。
 
そんな時に元気で激しい曲を聴くとかえってストレスになってしまいます。まずは静かでしんみりした曲を聴くのが効果的なわけです。
 
ただし、悲しげな曲をいつまでも聴き続けるのはダメで、徐々に楽しげな曲に変えていくのがポイントです。
 
「同質の原理」を私なりに解釈してまとめるとこんな感じになります。

気分が落ち込む

悲しげな音楽をかけてさらにとことん落ち込む

落ちるだけ落ちたらあとは上がるだけ

楽しげな音楽をかけて気分を少しずつ高めていく

復活

 
おそらく大ハズシはしていないと思います。実際私も何度かやって効果を感じているので・・・。