高気圧カプセル、いわゆる「ベッカムカプセル(厳密には語弊があるのですが)」は、高校野球で早稲田実業の斉藤祐樹投手が使って一気に認知度が高まりました。
 
高気圧カプセルと似たものに高気圧酸素治療があります。


 
この二つには違いがあり、ざっくり言うと前者は健康器具(効果には言及できない)、後者は治療行為(効果が認められている)です。
 
以下に違いをまとめます。

高気圧カプセルは健康器具です(効果は謳えません)使用に不向きな人は

高気圧カプセルとは、1.25~1.3気圧(メーカーにより違いがあります)程度に加圧したカプセル内で40分ほど横になる健康器具です。
 
メーカーによってはカプセル内の酸素濃度を高めているものもあります。
 
かなり大がかりな機械なので、個人で所有されることはまれで、リラクゼーションサロンや専用の施設での利用が多いようです。
 
利用料は1回5000円ほどが相場です。
 
高気圧カプセルを使って期待できるとされる効果には次のようなものがあります。

肩こり・腰痛の解消、疲労回復、美肌効果、老化防止、ダイエット、骨折・打撲・肉離れなどの治癒促進、日焼けやしもやけなどの炎症改善
 

 
高気圧カプセルはまだ研究が始まってから日が浅く、これらの利点も治療実績やデータから推測されているものです。
 
使用する際には注意点もあります。
 
気圧の変化が鼓膜を圧迫するので鼓膜の弱い人、耳抜きができない人には不向きです。また狭い空間に長時間入るため、閉所恐怖症の人にも辛いでしょう。
 
妊婦、ペースメーカー使用者、糖尿病などでインスリンを投与している人は利用できません。
 
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ベッカム選手が使ったのは高気圧酸素治療

02年の日韓サッカーW杯前に、サッカー界のスーパースター、ベッカム選手が骨折治療に使ったのは「高気圧酸素治療」で、「高気圧カプセル」とは別物です。
 
市販されていたり、美容サロンなどで使われている高気圧カプセルは気圧が1.3気圧ほどで純酸素の吸入も無いため、体内に溶け込む酸素の量は少なくなります。
 
よって「健康器具」であり、治療効果をうたうことはできません。リラックス効果は感じられるかもしれませんが、医療機関の高気圧酸素治療とは別物です。
 

 
対して高気圧酸素治療は2~3気圧の高圧下で60分以上の純酸素吸入を行うものです。
 
この時の酸素は「溶解型酸素」と呼ばれるもので、気圧に比例して血液や体液に溶け込む量が増える特性があります。
 
高気圧酸素治療は体内や患部に十分な酸素を送り込むことができるため、急性一酸化炭素中毒や急性心筋梗塞、やけどや凍傷、骨折、靭帯損傷、ねんざといった症状に効果を発揮します。
 
つまり治療行為なので、高気圧酸素治療は24の疾患で保険が適用されています。
 
「プロスポーツ選手が治療目的等で利用した」という場合は、ほぼ間違いなくこちらの高気圧酸素治療だと考えられます。
 

まとめ 高気圧カプセルと高気圧酸素治療の違い

まとめると、次のようになります。
 
◆高気圧カプセル
・健康器具であり、一般にベッカムカプセルと呼ばれる傾向あり
・接骨院、美容サロンなどで使われており、市販されているものもある
・カプセル内の酸素濃度を上げて「高酸素」をうたうことも
 
◆高気圧酸素治療
・カプセル式は一人用
・タンク式は一度に多人数収容できる大がかりなもの。東京医科歯科大病院の高気圧治療部のタンクは16人収容できる
・医療機関などで行う治療行為。医学界で治療法として確立している
 
高気圧カプセル 楽天での一覧
アマゾンの高気圧カプセル一覧
 
ちなみにサッカースペインリーグ レアルマドリードなどで活躍しているラウル選手は、低酸素室を利用してケガを早く治したそうです。(下記事参照)

高圧酸素カプセルはドーピング規制対象外

(追記)
「高圧酸素カプセル」は、世界反ドーピング機関(WADA)から「ドーピングの規制対象にならない」と指定されています。
 
08年の11月21日、WADAから日本に通達が来ました。つまり、高圧酸素カプセルは使ってもOKということですね。
 

ラウル選手の低酸素室

ベッカム選手が高圧酸素治療を行ったのに対し、スペインのサッカークラブ、レアル・マドリードに在籍するラウル選手は「低酸素室」を利用しています。
 
ベッカム選手とは逆に、酸素を減らしたのです。
 
この低酸素室では、大気中に約20%含まれている酸素の量を、特殊な換気装置で16%まで下げます。
 
すると赤血球中のヘモグロビンが増え、疲れにくく、ケガの回復などが早くなるのです。ラウル選手はこの部屋で毎日6~8時間の睡眠をとりました。
 

 
ラウル選手は05年の11月、試合中に膝をケガしています。全治半年の重症だった上に、復調後もいまひとつ調子が上がらなかったのです。
 
周囲では限界説もささやかれていましたが、低酸素室の効果は目覚ましく、ラウル選手は「まるで自分の足じゃないようだ。すごく力がついて、信じられない」と驚いています。
 
ちなみに低酸素室はラウル選手の夫人も利用しています。