前立腺は人によっては加齢と共に大きくなり、前立腺肥大と呼ばれます。
前立腺肥大症の典型的な症状の一つに夜間の頻尿があります。これは肥大化した前立腺が膀胱を刺激するために起きます。
一晩に2から3回以上尿意で目覚めるようになったら要注意です。
また、前立腺が肥大化すると尿道を圧迫するため尿の出が悪くなります。排尿開始までに1分前後かかるようになるのも前立腺肥大の症状です。
熟年以降の男性に発生し、高齢化や食生活の欧米化に伴い、日本でも急増中でここ50年で75倍にもなっています。
症状が進行すると、尿失禁や、尿閉(尿が出ない)、腎不全、尿毒症を起こすこともあります。
前立腺の疾患では、前立腺がんにも注意が必要です。
前立腺がんの死者は、1950年には83人でしたが、約50年後の2005年現在では75倍の約6000人と、大幅に増加しているのです。
これは食生活の西洋化という環境因子が大きく影響していると考えられます。
前立腺がんの自覚症状は前立腺肥大と同じで頻尿や腰の痛みなどで、自覚症状が出るころにはかなり進行しているといわれています。
前立腺がんは若年層ではほとんど発症せず、50歳以降で多くなり、年齢が進むにつれて発症率も高くなります。
日本泌尿器学会によると、07年現在で50歳以上の男性の約230人にひとりが前立腺がんにかかるそうです。
前立腺肥大症になると前立腺がんにはならないという俗説は全くの誤りです。
肥大症が発生するのは尿道の周り、がんは主に前立腺の外側の部分と、発生の部位が異なるので片方にかかれば片方にはかからないということはありえません。
PSA値と前立腺がん 多い国の特徴も
PSAとは前立腺がんの進行に伴って血液中に出る特異なたんぱく質で、「腫瘍マーカー」とも呼ばれてガンの目印になります。
PSAが血液中に増えてくると「前立腺がんの可能性が高い」と判断できるわけです。
50歳から64歳までのPSAの基準値は4.0ナノグラム/mlとされています。40代後半から50歳を過ぎたら定期的な検査を受けましょう。
PSAは前立腺特異抗原とも呼ばれており、前立腺の異常のみを示します。
そのためPSA検査は前立腺がんの検診として非常に有効で、進行度の把握などが可能です。前立腺がんが増殖を始めると血液中のPSA濃度が上昇します。
しかし、PSA値の上昇が即前立腺がんを意味するというわけではありません。前立腺肥大症でもPSA値が上昇することがあるからです。
「PSAは重要ではない」という主張もあります。
「米国がん研究所ジャーナル」誌の2011年2月号に、「PSAは重要な予測因子ではない」という研究結果が掲載されています。
研究に参加したニューヨークのスローン・ケッタリングがんセンターのアンドリュー・ビッカーズ博士らは、製薬会社の前立腺肥大治療薬試験に参加した、55歳以上の男性5519人を7年間追跡調査しました。
その結果、PSAの急な上昇と前立腺がんの発症に、重大な関連は見られませんでした。
研究チームは「PSAが急に上がっても、トータルで安全レベルにあれば問題ない」とコメントしています。
前立腺がんは高齢になるにつれ発症率が上がり、特に70歳を過ぎると急激に患者数が増えます。
最近の日本は高齢化が進んでいるので前立腺がん患者数がハイペースで増加しています。1995年から2020年の間に患者数が6倍になるという統計もあるそうです。
前立腺がんが多く発症している国の気候や生活習慣などを調査すると、次のようなことがわかっています。
・日照時間が短い(ビタミンDとの関係?)
・動物性脂肪を多く摂る
逆に発症率が少ない国の特徴としては
・日照時間が長い
・発酵食品を多く食べる(腸内環境との関連?)
・緑茶を飲む、トマトを多く食べる(抗酸化物質の摂取)
といったものがあります。
トマトに関しては、トマトの消費量が多いイタリアには前立腺がんの患者が少ないことがわかっています。
前立腺がん対策は非常に発達しており、治療・手術の手段も増えていますが、まずは生活習慣を見直して予防することが大事なのは言うまでもありません。
前立腺肥大症と膀胱炎の関係
前立腺肥大症と膀胱炎はあまり関係が無さそうですが、前立腺肥大症が原因で膀胱炎を発症するケースがあります。
前立腺肥大症が進むと尿の出が悪くなり、膀胱に一定量の尿が常に残るようになります。その残尿に細菌感染が発生し、膀胱炎を引き起こしてしまうのです。
細菌がさらに体内の奥まで侵入すると腎盂炎になることもあります。
膀胱炎を起こすほど前立腺肥大が進行している場合は、まず前立腺を切除する手術を最優先で行い、排尿障害を改善しなくてはいけません。
膀胱炎の発症に前立腺肥大症が関っているケースでは、前立腺を処置しないまま膀胱炎を治しても、必ずと言っていいほど再発します。
膀胱炎では排尿すると陰部に痛みが走り、尿が濁ってきます。抗菌薬により治療を施せば治癒します。
前立腺肥大症の症状としては
・排尿回数が増える
・尿意が急に起きる
・睡眠中でも尿意で目が覚め、トイレに行く
・尿がすぐ出てこない
・尿の勢いが弱い
・残尿感がある
といったものがあります。
前立腺肥大症は50歳代の男性の約40~50%、80歳以上の男性では80%を超える人に発症すると言われています。
前立腺肥大は初期であれば特に治療は必要ありません。しかし頻尿や残尿感が気になるようであれば、一度泌尿器科を受診しておきましょう。