エコノミークラス症候群(正式名称は静脈血栓塞栓症)は、脚にできた血の塊が肺の血管を詰まらせることで発症します。
 
2002年4月にサッカー日本代表の高原直泰選手が発症して一気に知られるようになりました。
 
高原選手は日韓ワールドカップを辞退することになり、さらに04年5月には症状が再発してしまい、今度はアテネ五輪出場を断念せざるを得なくなります。

飛行時間が7時間を超えると増え始め、20時間以上のフライトになると発生率がグンと高くなります。
 
名前の由来は飛行機の座席ですが、「狭いところで長時間座り続ける」状態であれば、場所にかかわらず起こりえます。
 
ファーストクラスやビジネスクラスの座席でも発症しますし(02年に発症した高原選手が座っていたのはビジネスクラスでした)、バスや列車のシートでも同様です。
 
長時間座りっぱなしになるタクシー運転手や長距離トラックの運転手といった職業の人にも発症した例があります。日本では年間4千件ほど起きており、意外と多発しています。
 
いすに座った姿勢での足の血流量は、仰向けに寝た状態の三分の二まで低下します。
 
血栓が特にできやすいのはひざ下です。ひざを曲げていると、ひざから下の血流が悪くなり、血液中の水分が血管の外に染み出て脚がむくんでしまいます。同時に血液の濃度が高くなるので血栓もできやすくなります。
 
血栓ができた状態で立ち上がり、歩き出すと血液が太ももへ勢い良く流れ込みます。すると血栓が血流に乗って移動し、肺の血管を詰まらせてしまうのです。
 
血塊が心臓部の大きな血管に詰まると胸痛や呼吸困難、失神などを引き起こし、場合によっては死に至ります。
 
エコノミークラス症候群は飛行機などの乗り物に乗っている最中よりも、
 
・フライトから数日後
・座席を立ち、歩き始めてしばらくしてから

 
発生することが多いことがわかっています。
 
エコノミークラス症候群を防ぐには、脚を定期的に動かすこと、姿勢を時々変えること、水分を補給することなどがあります。
 
飛行機の中は非常に乾燥していて、1時間に80CCほどの水分が失われるそうです。「トイレに立つのが嫌だから」といって水分を摂らないのは非常に危険です。
 
ただし、カフェインを含むお茶やコーヒー、アルコールを含むビールなど酒類は利尿作用があるため逆効果になってしまいます。