健康を意識していて「おそらく間違いない」と感じる方針のひとつに
「何事もほどほどに」
があります。
食事でも運動でも「過ぎたるは猶及ばざるが如し」だと思うのです。
このコンテンツでは、栄養面でのそういう例を紹介します。
((PR:Amazon)週刊文春 2014年 8/21号190~191ページを参考にしています)
ベータカロテンは多すぎるとがんリスクを上げる
ベータカロテンに対しては、誰もが「身体によい」というイメージを持っているでしょう。
実際にベータカロテンは、遺伝子を傷つける活性酸素を抑制する抗酸化物質として身体によい作用を持っています。
この働きから、がんを防ぐ栄養素の筆頭に挙げられることも珍しくありません。
しかし、ベータカロテンをとりすぎるのは良くありません。
がんを防ぐどころか、がんリスクを上げることもあるのです。
アメリカ、フィンランド、中国で、ベータカロテンを摂取してもらう大規模な比較実験を行いました。
すると、中国では胃ガンのリスクが下がったのに対して、アメリカとフィンランドでは肺ガンのリスクが上がったのです。
この結果の違いは、人が持つ抗酸化物質レベルが国によって差があるため生じます。
中国人は血中の抗酸化物質のレベルが元々低いので、そこにベータカロテンが加わって抗酸化作用が適切に発揮されたと考えられます。
対してアメリカ・フィンランドの人々は、血中の抗酸化物質が比較的多いため、ベータカロテンが加わると「過剰」になって、がんのリスクを上げるよう働いてしまったのです。
ちなみにベータカロテンと同じように抗酸化作用があるビタミンEも同様です。
サプリメントとして低用量を摂取すると死亡リスクを下げますが、高用量をとると軒並み死亡リスクが上がるのです。
葉酸もとりすぎるとガンリスクを上げる
似たような現象は葉酸でも起きます。
葉酸は近年注目されている栄養素で、欧米では昔から利用されていました。
日本での認知度はいまいちでしたが、最近は特に妊婦さんに必要な栄養素として知られるようになっています。
葉酸が不足すると胎児の神経系の発達が滞るおそれがあるので、日本でも葉酸サプリ摂取をする妊婦さんが増えているのです。
妊娠している女性以外にも恩恵があります。
お酒好きの人が葉酸を摂取すると大腸ガンなどのリスクが下がるという研究結果があるのです。
しかし葉酸もまた、とりすぎるとがんリスクを上げてしまうことがわかっています。
葉酸は細胞分裂のエネルギーとして使われるため、体内に過剰に存在するとそれがガン細胞の分裂にも貢献してしまうのです。
運動や栄養摂取を問わず、どれほど「身体に良い」と言われることでも、ほどほどにすべき、というひとつの例です。