更年期を過ぎた女性は女性ホルモンが減少することによってさまざまな疾患にかかりやすくなります。
心臓病はその代表的なものです。
女性ホルモンには動脈硬化を遅らせる作用があるため、閉経後は動脈硬化性の心臓病のリスクが上がります。
このリスクを減らすために考え出されたのがホルモン補充療法です。
体内で生産されなくなった女性ホルモンを外部から与えることで、閉経後の女性の心臓病リスクを減らすわけです。
ただしこの療法には異議も唱えられています。
アメリカの国立心肺血液研究所がスポンサーになった研究では、心臓病を持つ閉経後の女性にホルモン補充療法を施しても心臓発作の発症件数は減少しなかったのです。
アメリカでは以前、心臓病対策に限らず、女性ホルモンの充填療法が流行したことがあります。
更年期症状の顔のほてりや気分の落ち込み(うつ状態)をやわらげるために行われたのが始まりです。
その後は骨粗しょう症や動脈硬化予防、さらには肌を若返らせるなど様々な目的で女性ホルモンの充填が行われました。
アメリカでは60歳以上の女性の3割近くがホルモン充填療法を受けていた時期があります。
ところが臨床試験を重ねるにつれ、ホルモン充填療法の副作用や効果の有無が明らかになってきたため、流行は下火になりました。この心臓病の例もそのひとつです。
一方でホルモン充填療法の長所を主張する意見も多く、実際に効果を感じた女性も多数存在します。
さらなる臨床試験の結果が待たれるところです。