高血圧といえば男性のイメージが強く、女性はどちらかというと低血圧で辛い、という話題を多く耳にします。
実際に、女性は高血圧が急速に進行することはまれです。
一部の女性ホルモンが血圧を低く保つ働きを持っているからです。
このホルモンが分泌されている間は、女性の高血圧や血管の病気は少ないのです。
閉経後の女性ホルモン量低下による影響 血圧
女性が年齢を重ねて閉経をむかえると、事情は一変します。
分泌される女性ホルモンの量が減るので、血圧を抑えていた作用も弱くなります。すると途端に血圧が上がり、女性にも高血圧が増えてきます。
多くの女性が閉経期に入る50代では、男女の高血圧患者数の差が少なくなります。70代になると、女性の高血圧患者のほうが多くなるという統計もあります。
ちなみに女性は妊娠をすると血圧が高くなる傾向があります。多くの場合出産後に血圧は元に戻りますが、血圧が高いまま戻らない人もいます。
その場合は早めの処置が必要なので医師と相談しましょう。
女性ホルモン・エストロゲンと認知症 男性の場合は?
閉経は認知症にも影響を及ぼします。
アルツハイマーや認知症にかかる割合は、女性の方が男性よりも二倍近く多いことがわかっています。
女性は閉経後、卵巣のエストロゲン分泌が急激に減り、数年後にはなくなってしまいます。
エストロゲンには脳の活動を助ける、記憶力を増強する、脳の老化を抑制するといった作用があります。エストロゲンの有無は脳の老化に直接関わってくるのです。
閉経後にエストロゲンが減ってしまう女性は認知症のリスクが高くなってしまいます。
ちなみに月経日と試験日が重なった女子学生は成績が悪くなるというデータがあります。
月経日にはエストロゲンの血中レベルが下がり、勉強した知識をスムーズに思い出せないからと考えられています。
男性の場合、男性ホルモンのテストステロンが老年期になっても分泌されます。
なんとテストステロンは脳内でエストロゲンに変わる性質を持っています。
なので女性よりも認知症のリスクが少ないのです。
このコンテンツでは、こうした女性ホルモンと体の不調についてまとめています。
女性ホルモン補充療法の効果と副作用 乳がん 脳卒中 心筋梗塞も
ここまで紹介してきた内容から「女性ホルモンが減って弊害が起きるなら、女性ホルモンを補充すればいいのでは?」と考えるのではないでしょうか。
実際に「女性ホルモン補充療法(もしくは女性ホルモン充填療法)」という手法があります。内服薬や貼付薬を利用して女性ホルモンを体内に補充するのです。
女性ホルモン補充療法は更年期障害や骨粗しょう症を改善します。
欧米では広く実践されていますが、日本ではあまりなじみがありません。
日本でこの療法を受ける女性は欧米の二十分の一程度といわれています。
女性の更年期障害ではのぼせや発汗、気分の落ち込み、不眠といった症状が出ますが、女性ホルモン補充療法を施すことで劇的な改善が期待できます。
しかし米国国立衛生研究所(NIH)は女性ホルモン補充療法の副作用を指摘しています。
NIHは、女性ホルモン補充療法を受けている1万6千人の中高年女性を対象に、骨粗しょう症や更年期障害に対する予防効果と副作用を調べました。
その結果、女性ホルモンを5年以上服用し続けた女性は、服用しない女性よりも乳がん、脳卒中、心筋梗塞の発生率が高いことがわかりました。
とはいえNIHは、更年期障害の症状が重い場合は、一定期間に限って女性ホルモンを服用することに問題は無いとしています。
NIHの研究結果だけで女性ホルモン補充療法そのものを否定することはできませんが、副作用で発生する疾患を早期発見するため、定期的な健康診断は欠かさないようにしましょう。