「超高齢化社会」の日本では、認知症は無視できない健康トピックです。
 
認知症は研究が進んでおり、予兆やリスク要因などもある程度わかっています。
 
以下にまとめます。

二種類の認知症

認知症には、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の2種類があります。
 
前者は、名前の通り脳の血管障害によって生じます。脳出血・脳梗塞などにより神経細胞が血液不足に陥り、細胞が壊死するためにその部分の脳機能が低下するわけです。
 
アルツハイマー型では神経細胞の集まりである大脳皮質が障害されます。
 
βアミロイドという異常なたんぱく質の塊が神経細胞に蓄積し、その塊が神経細胞を死滅させることが原因の一つだとされています。βアミロイドが蓄積する原因などはまだよくわかっていません。
 
脳血管性認知症では知的機能の一部が保たれ、自分の障害を認識できることが多いといわれています。
 
それに対しアルツハイマー型では知的機能が全体的に低下するので、人格障害・記憶障害が起きやすいため、障害を自覚する認識力も失われがちになります。

認知症の予兆・サイン

認知症には、いくつかの予兆・サインがあります。
 
代表的なものをまとめます。

・少し前のこと(トイレや食事など)を忘れがちになり、最近の話を思い出すことができない
・時間の概念が無くなり、日付も忘れやすくなる・同じ話や言葉を繰り返す
・特定の言葉や単語が出てこなくなり、「あれ それ」などが増える
 
・会話の理解が困難になり、質問を理解していないことがある
・家族に依存することが増える、質問を受けると家族の方を見たりする
・身なりや趣味に関心を示さなくなる
・「物を盗まれた」と騒ぐことが多くなる
 

 
認知症が疑われる行動があっても、本人を叱ったり、否定するのは良くないとされています。
 
認知症の高齢者は、物忘れしたこと自体は忘れてしまっても叱られたことは覚えているケースが多いようです。
 
つまり自尊心を傷つけられたことは忘れていないことが考えられるのです。
 
■食事を何度も催促される場合は軽いものを食べてもらう
■「家に帰ります」といって外出しようとするときは近くを散歩する
 
といった対処が理想的です。

認知症になりにくい・やりやすい性格

年をとって認知症になるかどうかは、後天的な要素によるところも大きいようです。
 
認知症にかからない人に共通した性格は
 
「開放的」「積極的」「明るい」「正義感が強い」
 
といったもので、逆に認知症老人の発症前の特徴としては
 
「わがまま」「頑固」「閉鎖的」「気性が激しい」
 
など、非協調的、非社交的な性格があげられています。
 

認知症リスクの高い食生活

認知症を発症しやすい食生活の特徴も指摘されています。
 
甘いものが好き
認知症患者の発症前の食習慣を調べると、「甘い菓子類」や「甘い清涼飲料」を多くとる傾向があることがわかっています。
 
これは脳血管性、アルツハイマー型、および二つの混合型全てに共通した特徴です。
 
魚と野菜の摂取量が少ない
オランダで行われた、認知症と食事の関連を調べた大規模な調査では、野菜と果物の摂取が認知症を2種類とも予防する効果があると結論付けています。
 
また日本の調査でも、女性のアルツハイマー患者は、緑黄色野菜や海藻の不足による微量栄養素の欠乏が顕著でした。
 
815人を約4年間追跡調査したアメリカの研究によると、魚をよく食べる人は、魚を全く食べない人に比べてアルツハイマー型認知症になる確率が60%も少ないことがわかりました。
 

認知症と性別の関係

アルツハイマー型認知症では、女性の発病率が男性の1.5~2.5倍になっており、女性ホルモンが関わっていると考えられています。
 
女性ホルモンであるエストロゲンは神経細胞を保護する働きがあり、さらに神経細胞を破壊するβアミロイドの生成も防ぎます。
 
加えてエストロゲンは脳の血管壁を強くするので、脳血管性の認知症を予防する効果も持っているのです。
 
女性が閉経を迎えてしまうと、このエストロゲンの分泌が激減してしまいます。
 
つまり、認知症を防ぐ非常に強力な武器が少なくなってしまうわけです。そのため閉経後の女性は認知症の危険度が高まるのです。