現在はパソコンにスマホ、携帯電話などIT機器が普段の生活の一部になっており、それらを触らない日はないほど普及しています。

そうした機器が私たちの生活を格段に便利にしてくれているのは間違いありません。
 

 
しかし反面いろんな場所に行き、人と会って話す、話を聞く、という機会は減っているようです。
 
この変化は脳にも影響を及ぼすようです。

メールと会話 脳刺激の多さの圧倒的違い

現在最も使用されているコミュニケーションの手段はおそらく、メールをはじめとする文字(テキスト)でのやりとりでしょう。
 
文字でのやりとりと従来の会話を動作の面で比較すると、以下のようになります。

メール:(来たメールを)見る→考える→(自分のメールを)見る→返信(以下繰り返し)
 
会話:相手の話を聞く→考える→しゃべる(以下繰り返し)

 
動作の数だけ見ると差は無さそうですが、脳の働きという面で見ると大きな差があります。
 
まずメールの場合、五感のうち使うのはほとんど視覚だけです。
 
着信音以後は視覚と指先だけで事足りるのではないでしょうか。刺激の変化といえば、絵文字、顔文字を使うくらいです。
 
これに対して会話では聴覚、視覚、時には嗅覚も刺激されます。しかもその刺激も実に多種多様です。
 
直接人と会って話すという行為は、単に言葉を交わすだけでなく、相手の表情を見る、声色を聞くという動作も加わり、それらを総合判断して会話を進めていくものです。
 
表情や見た目、声色を判断する際には相手の機嫌、性格、自分の好みかどうか、健康状態、髪型の変化、無精ひげの有無、服装、化粧の状態・・・など、ほとんど際限なく「刺激のもと」があります。
 
相手が2人以上であればもう大変なことになるでしょう。
 

 
テキストのやりとりだけを行うメールやSNSでは、会話ほど「場の雰囲気」というものができません。
 
さらには話の進み方に流れが無い(返信を待つ間が空いてしまう)ので、会話の中で気の利いたアドリブを挟む機転、といったものは養われません。
 
こうやって書いてみるとただ単に「人としゃべる」という行為も意外と頭を使うことがわかります。
 
言い換えると、ITに頼りきってしまうと脳が活性化せず、退化してしまいかねないのです。
 
記憶力や判断力、選択・系列化の能力、視覚的注意力、空間認知能力が低い若者が増えている、との報告があるのは、その退化の表れかもしれません。
 
仕事に支障をきたし、会社を辞めざるを得なくなった、という例もあるそうです。

IT過多による弊害と対策

最近、こんなことありませんか?

・「あれ」「それ」など代名詞を会話中に多用するようになり、言葉がすぐ出てこなくなった
 
・予定を立てることや書類作成が億劫になった
・身だしなみが乱れ、世間の流行や時事問題にも無関心になった
・人と会うと疲れる 友人も少ない
 
・状況判断ができず、問題解決をマニュアルどおりにしかできない
・情報を勘違いすることがある
・地図を見ても道に迷う
 
・待ち合わせ時間に遅刻する
・常識がないとよく言われる
・人の意見を聞かない

 
該当する項目が多いほど日ごろから脳が休みがちになり、脳の機能が退化してしているおそれがあります。若くても健忘症に似た状態と言えるでしょう。
 
とはいっても、脳の組織そのものが壊れているわけではないので、訓練によって機能の回復は十分可能です。
 
具体的には、新聞や雑誌を読んだ後、記事に登場した単語を一分間で10個思い出す、といったトレーニングがあります。
 

 
脳は筋肉に似ているといわれます。使わないでいると弱っていきますし、意識して新しい刺激を与え続ければ年齢に関係なく「強度」を保つことができます。
 
IT機器はとても便利で有益なものですが、時にはそれらに頼らない、昔ながらのローテクコミュニケーションを見直してみることも必要ではないでしょうか。
 
現代人の足腰のように、文明の利器のために脳の機能まで衰えてしまった、ということにならないためにも。