脳腫瘍はいわば「脳のできもの」で、年間10万人に10人程度(資料によって若干違いがあります)が発症しています。
「脳腫瘍」と聞くと深刻なイメージがありますが脳腫瘍には良性と悪性があり、発症する割合はほぼ半々とされています。
良性は完治も可能で、再発の心配もほぼありません。
悪性の脳腫瘍 特徴や症状 原因は?
ただし悪性の場合は話が一変します。
切除手術を行っても腫瘍を完全には除去できないことが多く、放射線療法や化学療法も併用することになります。
こうした処置を施しても、悪性脳腫瘍の5年生存率は高くありません。
脳腫瘍の症状で最も多いのは吐き気と頭痛です。頭痛は特に朝多く、日が経つにつれて頭痛がひどくなります。
その他にも身体のまひ、視力の低下や狭窄、知覚障害、記憶力・判断力の低下といった症状が見られます。
脳組織自体から発生する脳腫瘍(原発性脳腫瘍と呼ばれます)の原因は、いまのところよくわかっていません。
発症リスクを上げる可能性のあるものとしては喫煙、ストレス、高たんぱく・高脂肪の食品などがわかっています。
携帯電話やパソコンの電磁波が発症の引き金になるとの主張もあります。
他組織のがんが転移することで脳腫瘍になることもあります。
熊本「脳の健康フォーラム」二種類の脳腫瘍
2010年2月、熊本で「脳の健康フォーラム」が開催されました。
私も前半だけですが聴講し、脳に関するわかりやすい話が聞けました。
フォーラムでは宮崎大学脳神経外科の竹島秀雄医師が脳腫瘍について講演されています。
講演内容の一部を紹介します。
脳腫瘍を大きく分けると
1 脳の外から脳を押しつぶすように発育するもの
2 脳から発生して脳組織にしみこむように発育するもの
の二つがあります。
1について
外科手術により患部を切除することで全快が可能です。「神の手を持つ外科医」が話題になるように、脳外科医の力量が問われる症例です。
2について
外科手術だけでは治療は完全ではなく、抗がん剤を用いる化学療法、放射線療法を使った総合的な(集学的とも言います)治療が必要です。こちらも外科手術同様に医師の経験がものを言います。
これら二つの症例の他に、全身のがんが血液に乗って脳に腫瘍が発生する「転移性脳腫瘍」もあります。
脳腫瘍の症状は発生する場所によって様々ですが、腫瘍の発育と共に徐々に悪化するのは共通した傾向です。
脳の腫れは眠っている間に進行するので、起きる直前に頭痛がひどくなることが多くなります。
電磁波は脳腫瘍や白血病リスクを上げる?
最近はあまり聞きませんが、「電磁波は身体に悪い」とする説が一時期取り沙汰されました。
電子レンジやテレビ、携帯電話などの家電類や、屋外の送電線などから発生している電磁波が、身体に良くない影響を及ぼす、というものです。
電磁波が引き起こすとされている病気としては次のようなものがあります。
・脳腫瘍
・聴神経鞘腫(脳腫瘍の一種です)
・白血病
・白内障
米国では1989年に電磁波の悪影響が社会問題化しました。
「高圧送電線や変電所付近の子供には白血病患者が2~3倍多い」という研究結果が発表されたことがきっかけです。
その後、電磁波が強い職場で働く人にも白血病が多くなるという報告も出されています。
加えて、世界の大手携帯電話メーカー複数が、特許関連文書の中で「携帯電話の電磁波は使用者の健康を害する」と記していたこともわかっています。
こう書くといかにも恐ろしく感じますが、「電磁波の身体への悪影響は確認できなかった」とする研究結果も多く発表されています。
果たしてどちらが正しいのでしょうか?
私個人的には「ハッキリとはわからない」というのが正直なところです。
このへんは食品の安全性と似たところがあります。
食品に含まれる成分に、ラットを使った実験では発がん性が認められたとしても、その結果をそのまま人間に当てはめることは難しいものです。
人間はその成分だけを摂取して生活しているのではありませんし、発がんの可能性があるとされる要素は食品だけではありません。
「原因はコレだ!」とひとつに特定するのは非常に困難なのです。電磁波でも同様です。
電磁波に接触する機会の多い人が脳腫瘍を発症しても、それは喫煙が原因かも知れませんし、食品によるものかもしれません。あるいはこれらが複合して発症したことも考えられます。
結局のところ、「電磁波といかに付き合うか」は個人の判断に委ねられているということになるでしょう。
有害とする説、無害とする説いずれも頭に入れておいて、行動を決めるわけです。
これは電磁波に限らず、健康全般に言えることです。