突然ですが、血管を柔らかくする食べ物は?と聞かれて、即答できるでしょうか?

意外と難しいですよね?
 
対して「血管を柔らかくする運動」はいくつかあります。
 
(このコンテンツは栄養と料理2014年07月号(Amazon)96~101ページを参考にしています)




「血管を柔らかくする」「食材」はピンとこないが「運動」ならある

「血流を促す」「ナトリウムを排出する」とされる食べ物が、間接的に「柔らかくする」ような気もします。
 
しかし血管のアンチエイジングにダイレクトに効果のある食材、という話はあまり聞きません。
 

 
対して「血管を若返らせる運動」はしばしば目にします。
 
血管を柔らかくするには、食べ物よりも運動を意識するほうがわかりやすいのは間違いなさそうです。
 
それでは、どんな運動が良いのでしょうか?




有酸素運動で血管柔らかく マラソン選手は動脈硬化度が低い

まず、最初に挙げられるのは
 
有酸素運動です。
 
有酸素性のトレーニングをするマラソンや長距離走のアスリートは動脈硬化度が低いことがわかっています。
 

 
若年者に2ヵ月ほど有酸素運動を続けてもらった実験では、もともと血管が柔らかい若者でも、2ヵ月後は血管がさらに柔らかくなりました。
 
ただし運動をやめてしまうと、1ヵ月後には血管の硬さが運動前の状態にもどってしまいました。継続が大事なわけです。
 
若者だけでなく、もちろん高齢者も自転車こぎ・ウォーキングといった有酸素運動で血管が柔らかくなります。肥満であっても同様です。




高強度の筋トレなど無酸素運動は?実はボディビルダーは…

それでは、有酸素運動に対して筋トレ(無酸素運動)はどうでしょうか?
 
結論から書きますと高強度の筋トレは血管を硬くします。中強度の筋トレであれば、血管の硬化は見られません。
 
(筋トレでもやり方によっては動脈硬化予防に効果があるとする論文もあり、まだ研究余地はあります)
 
陸上競技の投てきなど、高強度の筋トレを行っているアスリートは、若年であっても同世代の人と比べると動脈が硬くなっています。
 

 
またボディビルダーのように激しい筋トレをしている人は動脈が硬いことがわかっています。
 
高強度の筋トレをすると、2ヵ月ほどで動脈が硬くなります。
 
ただし有酸素運動の場合と同じように、トレーニングをやめると血管の柔らかさは元に戻ります。




有酸素運動が血管を柔らかくする理由2つとウォーキングのやり方例

有酸素運動が血管を柔らかくするのは、
 
・運動により産生されるNO(一酸化窒素)が血管平滑筋に働きかけ、柔らかくする
 
・動脈硬化を促進させるエンドセリンという物質の発生を抑制する
 
と、主に二つの理由があります。
 

 
アメリカでは中等度の有酸素運動を1日30分、毎日行うよう推奨されています。ここでの中等度とは、息が切れるくらいのややきつめの運動(最大心拍数の70~80%)です。
 
これは厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」の方針とも一致しています。
 
ウォーキングの具体的なやり方の一例を紹介します。

・ゆっくりしたペースで歩き始める
・5分くらいかけて徐々にペースを上げていく
・「ちょっときついな」と感じるペースまで上げる
・そのペースをキープして30~35分間歩く
・最後に5分くらいかけて徐々にペースを落とす
・目的地に着いたらすぐに止まらず、周辺をゆっくり歩く
 

 
以上で40~45分程度のウォーキングになります。
 
調査によると、運動頻度は週に3回以上は必要だという結果が出ています。
 
毎日キッチリやる必要はありませんが、1日おきくらいの習慣にはしたいものです。
 




運動による動脈硬化抑制作用は上限あり(加齢で上限が低くなる)

基本的に体を動かせば動かすほど動脈硬化の抑制効果があるわけですが、その効果には上限があります。
 
中年および65~74歳の高齢者の場合、一日あたり300kcal程度の活動量で頭打ちになります。(300kcalの活動量は60kgの男性が8千~1万歩歩いた時の消費エネルギーです)
 
年をとると、その上限が下がります。75歳以上では200kcalくらいで頭打ちになるのです。
 
これは言い換えると弱めの活動であっても、動脈硬化予防効果が期待できることになります。散歩や家事などでこまめに体を動かすのは大事なことなのです。




血管年齢-37歳も!運動による改善例 ストレッチも一緒にがお勧め

研究結果を二つ紹介します。

ケースその1
1回40分の自転車こぎを週3~5日、3ヵ月間継続
 
中高齢女性Aさん(62歳)
運動前血管年齢85歳が3ヵ月後には69歳に(-16歳)
 
中高年女性Bさん(65歳)
運動前血管年齢66歳が3ヵ月後には53歳に(-13歳)
 

 
ケースその2
1回約1時間のストレッチとウォーキングを週2~3回3ヵ月間継続
 
肥満のCさん(39歳)
運動前血管年齢64歳が3ヵ月後には38歳に(-26歳!)
 
肥満のDさん(62歳)
運動前血管年齢71歳が3ヵ月後には34歳に(-37歳!)

 
ストレッチを併用すると、効果がグッと高まることがわかります。




おすすめのストレッチ箇所

ストレッチに関しては、以前のメルマガで記事にしています。
 
その記事を引用↓

血管を若返らせるために、ストレッチするべき箇所としては
 
太もも前面の筋肉
お尻の筋肉
お腹の筋肉

 
に加え、
 
肩の筋肉
ふくらはぎの筋肉
ハムストリングス

 
まで伸ばせればバッチリです。
 
脚を前方に伸ばして座り、手がつま先に届かないと動脈硬化が進んでいる可能性があります。(ただしこの目安は、40歳以上の人に限り適用できます)
 

こまめに体を動かし、機会を見つけて歩くという基本に加え、寝る前のストレッチは血管のためにかなりイイ感じ、ということになります。
 
日本人の死因の2位(心疾患)と4位(脳血管疾患)は動脈硬化によるもの。寝たきりの25~40%は脳血管疾患が原因だそうです。
 
「アンチエイジング」というと見た目が強調されがちですが、健康面を考えると血管の若返りも大事ですよね。
 
有酸素運動とストレッチを習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。