私のメルマガや当サイトでは、カロリー制限は健康によい、という趣旨の記事をいくつも紹介しています。
 
私もカロリー制限を意識していますが、ひとつ紹介しておきたい記事があります。

(このコンテンツは雑誌「栄養と料理」2014年 09月号102~105ページを参考にしています)
 
「カロリー制限で健康寿命は延びない」という、女子栄養大学副学長で、自治医科大学名誉教授の香川靖雄氏による記事です。
 
半ば常識のように語られる「カロリー制限=健康長寿」が、必ずしも正しくないというわけです。
 
これはいったいどういうことなのでしょうか?以下に紹介します。

語られない もうひとつの「アカゲザルの研究」

「カロリー制限で寿命を延ばす云々」の話になると、「アカゲザルの研究結果」が高確率でセットになっています。
 
「カロリー制限を行ったアカゲザルは寿命が延びた」というアレですね。私のメルマガでも記事にしましたし、その他の媒体で目にされた方も多いでしょう。
 
実はこれ、もうひとつ別の「アカゲザルの研究」があったのはご存知でしょうか?
 
しかも、そちらの研究では「寿命延長効果はない」という衝撃の(?)結果だったのです。
 

 
果たして、これはどういうことでしょうか?
 
よく知られている「寿命が延びた」ほうのアカゲザルの研究は、ウィスコンシン大学国立霊長類研究所(以下、霊研)で行われました。
 
30年におよぶアカゲザルの研究の結果、カロリー制限により寿命が延びるという結果が出たのです。
 
ところが、アメリカ国立老科学研究所(以下、老研)が行った別のアカゲザルの研究では、寿命延長効果はないとの結論になりました。
 
この違いは、栄養学者の間で大論争となりました。

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実験の内容を精査してみると

なぜこのような違いが出たのでしょうか?
 
まず、これら二つの研究では、アカゲザルに餌を与える条件がかなり違っていました。
 
霊研(よく知られてるほう)では・・・
 
・餌を自由に与えたグループ(自由摂食群)

・カロリーを30%制限し、ビタミンやミネラルを30%増量した餌を与えたグループ(制限食群)
 
・・・の二つに分けました。
 
すると、自由摂食群が50%生存している時点で制限食群は80%の生存率だったのです。これが「カロリー制限すると寿命が延びる」根拠としてよく挙げられるわけですね。
 
しかし、注意点がひとつ。
 
ここでの自由摂食群のサルは、いわば「好きなだけ」食べていました。明らかに過食気味だったのです。
 
後述する、老研のサルたちよりも糖尿病などの発症率が高かったこともわかっています。
 
つまり、この研究で比べられているのは
 
明らかに食べすぎなサルと、カロリーが3割少なく、ビタミンやミネラルの3割多い餌を食べたサルなのです。
 
「そりゃ後者のほうが長生きするだろ」という気がしませんか?
 
これをもって「とにかく摂取カロリーは減らしたほうがよい」という結論にはならないはずです。
 
一方老研では、対照食群と、それより20%カロリーを制限した制限食群を比較・追跡調査しました。すると、両者の生存率の間には差がない、という結論になったのです。
 
ここで対照食群に与えられた餌は一定量であり、軽い制限食とも言えるものです。そのため、対照食群の平均体重は一般的なアカゲザルよりも少なくなりました。
 
制限食群は、それよりもさらに2割カロリーの少ない餌でした。
 
条件の違いはまだあります。
 
女性医師
 
霊研で与えられた餌は、コーンスターチやショ糖など、純度の高い栄養分が中心でした。これらは血糖値を急激に上げるため、肥満や糖尿病につながりやすくなります。
 
対して老研では、麦や大豆、魚などが与えられています。
 
理想的な食生活に近いのは、言うまでもなく老研のほうですね。
 
そして先述したように、よく紹介されている霊研の研究では、餌を与える条件がそれでいいのか?という内容でした。
 
霊研の研究は、むしろ食べすぎを戒めるための結果として流布されるべきのような気もします。

実はカロリー制限は身体に悪い?米国の研究

私たちが参考にすべきなのは老研のほうであり、こちらはカロリー制限しても寿命は延びない、という結果が出ています。
 
さらに全く別の研究では「カロリー制限は害にすらなりうる」という結果も出ています。しかもこれは、ヒトを対象にした調査です。
 
ワシントン大学で、
 
・平均7年、最長20年間カロリー制限を行っている人

・平均21年間、最長35年間にわたって持久走を続けている人

・服薬や喫煙をしていない健常者で1週間の運動量が1時間以下、西欧食をとっている人
 
の3グループの健康状態を調査しました。
 
その結果、カロリー制限群は、空腹時血糖が最も低いのにもかかわらず、血糖による有害性を示す糖化度は最も高かったのです。
 
糖化は、老化を促進するとして最近よく話題になっています。糖化は細胞や組織の機能劣化を起こし、様々な病気の原因になるのです。

カロリー制限の弊害は糖化だけではありません。
 
香川教授は、過剰な減量は筋肉や骨密度を減らすリスクがあると警鐘を鳴らしてします。
 
長期にわたりカロリー制限を意識すると、骨粗しょう症や、高齢になってからのサルコペニア(筋肉量の減少)を引き起こしかねないのです。
 
いかがでしょうか?
 
とにかくカロリー制限すれば良い、というわけでもなさそうです。
 
とはいえ、じゃあ好きなだけ食べるぞ!もダメなのは明白です。
 
食べすぎはダメですが、かといって極端にカロリー制限を意識するあまり、必要な栄養が摂れないのはダメ、ということです。
 
もちろん、炭水化物と脂肪だけでカロリーを増やしていては、これまたダメですけど。
 
エネルギーやタンパク質にミネラル、ビタミンと必要な栄養をとっていけば、それなりのカロリー量になるのは仕方ない、とも言い換えられるかもしれません。
 
必要な栄養をとり、腹八分目くらいでとどめるのが最強、ということでしょう。やっぱり昔の人の言うことは正しいものですね。

私なりの結論をまとめてみると・・・

■カロリー制限が目的化して、摂取カロリーを抑えるために必要な栄養がとれないのは本末転倒
 
■「少ししか食べてないから長生きするはず!」というのもダメ
 
■必要以上に栄養(≒カロリー)をとるのももちろんダメ

・・・といったところですがいかがでしょうか。
 
必要な栄養は十分とりつつ、カロリーのとりすぎにも気を配っておくのが理想ではないでしょうか。

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