少し前(2012年 3月1日)ですが、興味深い記事がありました。

医療介護CBニュース
年齢調整死亡率、男女とも青森が最高-最低は長野・厚労省調査
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120301-00000006-cbn-soci
(現在この記事は削除されています)
 
ポイントをまとめます。

かつては死亡率が高かった長野県

記事の概要は以下のとおりです。

■2010年に年齢調整死亡率が最も高かったのは男女とも青森県 最も低かったのは長野県だった
 
■男性の年齢別死亡率は高い順に 青森 秋田 岩手 と北東北三県が並んだ
 
■女性は高い順に 青森 栃木 和歌山 大阪
 
■がんによる男性の死亡率が最も高かったのは 青森 秋田 北海道 
 
■女性は青森 大阪 北海道
 

 
■がんの死亡率は05年から全体的に低下しているが、青森 静岡 鳥取 岡山 鹿児島 の5県の女性は上昇していた
 
■心疾患では男性が 青森 愛媛 福島 が多く、女性は 愛媛 奈良 埼玉 が多い
 
■心疾患も05年から減少しているが、秋田 沖縄 の男性は増加していた
 
■脳血管疾患による死亡率は男性は 岩手 青森 秋田 で多く、女性は 岩手 栃木 青森 で多い
 
■脳血管疾患は05年から男女全ての都道府県で減っている
 
■死亡率が高い地域では、塩分摂取量や喫煙などの生活習慣が影響していると考えられる
 
■地域差は縮まっているが、特定の都道府県に高い傾向は続いている
 

 
寒い地域で死亡率が高いのは、ある程度仕方のないことかもしれませんが、食生活や喫煙習慣など、改める余地はまだありそうです。
 
この記事では、最も死亡率が低いと評価されている長野県ですが、1960~70年代の長野県は脳卒中などの発生件数が非常に多かったのです。
 
それが今では、食生活の改善や運動の奨励などにより、「最も健康的な県」になりました。
 
長野県はどんな取り組みをしたのでしょうか?以下にまとめます。
 
死亡率が高い地域では、長野県の例は良い手本になるのではないでしょうか。




減塩の周知徹底

かつての長野県の食習慣は、お世辞にも理想的ではありませんでした。
 
・漬物を食べるため食塩摂取量は多い
・対してタンパク質摂取量は少ない

 
という、悪い見本のような食習慣だったのです。(ちなみに、長野県は砂糖の消費量も日本で最も多い県のひとつです。この傾向は現在も変わっていません)
 
そしてご存じのように、長野県には海がありません。「長寿の食事」では常連とも言える魚や海藻などの海の幸が豊富ではないのです。
 

 
これに長野の寒冷な気候が加われば、脳卒中など循環器系の病気リスクは上がります。60~70年代の長野はまさにこの状況だったのです。
 
食を改善する必要性を感じた長野県は、「食生活改善推進員」略して「食改さん」や医師らが、1981年から食事の際の減塩を呼びかけ始めます。
 
循環器系に良くない旨のデータを提示しつつ、「塩分のとりすぎは絶対にダメ!」といった調子で減塩を呼びかけたのです。
 
その結果、1980年には15.9gだった食塩摂取量が、3年後には11gまで減少しました。これと比例するように、心臓病による死亡者数も減っていったのです。
 
長野県が促進したのは減塩だけではありません。健康維持に欠かせない「適度な運動」も広めました。




インターバル速歩など運動 長野県民の気質も

減塩と同時に、長野県は中高年の人達に積極的に運動するよう働きかけました。
 
そのひとつが「熟年体育大学」であり、そこではインターバル速歩などの運動を推奨しています。
 
インターバル速歩とは
 
「三分間速足でサッサカ歩いて、三分間ゆっくりブラブラ歩く」
 
を繰り返すウォーキングです。いわば、メリハリのあるウォーキングですね。
 

 
インターバル速歩の実践により、生活習慣病指標である
 
体重 体脂肪率 BMI 最高血圧 最低血圧 血中高コレステロール濃度 空腹時血糖値
 
といった値が全て改善した例もあるそうです。
 
体重や血圧が正常値よりも低い人は、インターバル速歩によって正常値に近づく(つまり体重や血圧が上昇)という結果も得られました。
 
こうした努力を県ぐるみで続けていくうちに、長野県には健康・長寿者が増えていきました。
 

 
余談になりますが、長野の人は「理屈っぽい人が多い」のだそうです。
 
これは「行動を起こす前にあれこれ考えてしまう」とも言えますが、同時に
 
「長所や原理を理解すると、実行に移す。なぜなら、その行動が自分のためになることをわかっているから」
 
という気質でもあるわけです。
 
「過剰な塩分がなぜいけないか」
「インターバル速歩がなぜ有効か」
 
を理解すれば、「勤勉である」という県民性も手伝って健康習慣を長続きさせられる人が長野県には多いのでしょう。

長野県ご長寿さんの食事の特徴8つ

長野県栄養士会が97年(ちと古いですが)に、県内に住む80歳以上の方1000人の食生活を調査しました。
 
いわゆる「ご長寿さん」がどんなものを食べているか調べたわけです。
 
その結果、次のようなことがわかりました。
 
・おかずをたくさんとる
・鶏や川魚などからたんぱく質をたくさんとる
・豆腐や凍り豆腐をよく食べる
・牛乳やヤギの乳をよく飲む
 
・米以外にも主食としてトウモロコシやソバも食べる
・緑黄色野菜を多く食べる
・塩分のとりすぎに注意している
・食事の全体量は腹八分目

 

 
魚介類や海藻類は少なくとも、「いろんなものを食べる」意識が長寿を支えていると言えるでしょう。
 
 
ただ、長野が長寿県であることに間違いは無いのですが、最近は食生活の乱れが目立っているそうです。似たような問題は、同じく長寿県として知られている沖縄でも指摘されています。
 
「食の欧米化」というやつですね。せっかく良い習慣が根付いているのに、なんとももったいない気がします。




長野が長寿県になれた理由まとめ

長野が長寿県となったポイントをまとめます。

・減塩を徹底した
・インターバル速歩など、適度な運動を推奨した
・いろんなものを食べ、中でもたんぱく質や緑黄色野菜を多く、腹八分目に

 
いずれもおなじみの話、と言えばそれまでですが、意識しなければなかなかできないことでもあります。
 
「元気なご長寿」は80歳や90歳で急に元気になったわけではなく、20代や30代からの長い積み重ねの結果です。
 
これからの人生を楽しく活動的に過ごすためにも、全ての世代で改めて意識する価値があるのではないでしょうか。