どれほど体に良いとされる食品や栄養素でも、功罪両面が指摘されることは多いものです。
私が当サイトでおすすめしている玄米にも、
・消化が悪い
・人によっては便秘・下痢の原因になる
・骨に良くない
といった主張があります。
実際にこうしたデメリットがあるかどうかは個人差もあり決めるのは難しいのですが、リスクがあることを知っておくのは無駄にはなりません。
管理人の印象では、ビタミンEは「功罪」が指摘されるケースが特に多い栄養素です。
このコンテンツでは、ビタミンEの良い面・悪い面をまとめます。
トマトのリコピンとビタミンEで前立腺がん抑制
トマトに含まれるリコピンは前立腺がん予防に効果があるそうです。
米国の「栄養学」誌06年5月号に、リコピンをビタミンEと一緒にマウスへ投与すると、前立腺がんの増殖を抑制できるという実験結果が発表されました。
この実験では、リコピンとビタミンEをそれぞれ人の体重1kgに対して5mgの割合になるようにサプリメントとしてマウスに投与しました。
その結果、併用した場合前立腺がんの成長が73%抑制され、生存期間も40%伸びました。
トマト100gあたりに含まれるリコピンの量は加工用トマトで約9mg、生食用で約3mgです。加工用トマトの方が多いのは、完全に熟してから収穫したトマトを使うからです。
最近は「高リコピントマト」というものも発売されていて、このトマトはリコピンの含有量が普通のトマトよりも1.5倍多いそうです。和歌山県や福島県で栽培されていて、歯ざわりがしゃきっとして、味わいにも深みがあるのだとか。
リコピンは抗酸化作用が強く、老化防止、生活習慣病予防・美肌効果などがあります。
リコピンは熱に強いのでトマトソースや煮込み料理などに加工しても破壊されることがありません。中国ではトマトは体を冷やす働きがあるので暑気あたり解消の食品とされています。
トマトの酸味は胃液の分泌を促し、消化を助ける働きがあるので暑さで食欲がないとき、あるいは胃腸が弱った時にトマトはおすすめです。
私もキッチンにトマト缶は常備しています。パスタやら洋風おじやなどいろんな料理に使えるので、あればなかなか重宝するのです。
・・・とここまで読んできたら、ビタミンEは前立腺がん抑制にイイんじゃない?という印象を受けますが、実は真逆の調査結果もあります。
ビタミンE単独の大量摂取は前立腺がんリスクを増やす?
前立腺がん対策にはビタミンEだ!というのはちょっと早計のようです。
MSN産経ニュースさん
前立腺がんの危険性増加か ビタミンE多量摂取で
sankei.jp.msn.com/life/news/111012/bdy11101214240002-n1.htm
(現在は削除されています)
この記事によると、
ビタミンEを大量に摂取する人は、そうでない人に比べて前立腺がんになる危険性が17%高くなる。(対象になったのは米国・カナダなどの50歳以上の男性です)
そうで、ここで「大量に」と分類されたグループは、ビタミンEを一日に268mg以上摂取しています。
ビタミンEは骨粗しょう症のリスクを上げるとの報告もあります。
ビタミンEの過剰摂取で骨が弱く
日本の研究では、過剰なビタミンEが骨を弱くするとの結果も出ています。
ビタミンE 取り過ぎると骨粗しょう症の危険
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120305-00000009-mai-soci
(現在この記事は削除されています)
竹田秀・慶応大特任准教授のチームによる研究の記事です。内容をまとめます。
・ビタミンEを吸収できないマウスは破骨細胞の働きが弱く、全身の骨量が増える
・培養された破骨細胞ビタミンEを加えると、破骨細胞が巨大化する
・正常なラットに、毎日10mgのビタミンEを含んだ餌を8週間与えたところ、骨粗鬆症になった
・これは人間に換算すると1000mg
1000mgのビタミンEを通常の食事で摂るのは困難なので、注意すべきはサプリを利用している場合です。
ビタミンEを大量に摂取しているケースは少ないと思いますが、一応注意しておいて下さい。
デメリットが続いたので、次はメリットをひとつ。
生理痛をビタミンEで緩和 英国の研究から
ビタミンEは生理痛を緩和させるという報告が英ダーバレイト・モダレス大学の研究チームにより発表されました。
15~17歳の女の子280人に、一日270mg相当のビタミンEを摂取してもらったところ、生理痛の度合いが非常に少なくなり、出血量も大きく減少したのです。
ビタミン剤は副作用の心配がないため専門家も注目しています。
ビタミンEが生理痛を軽減させる理由としては
・ビタミンEが血流を促すため
・性ホルモンの分泌を整える
といったものが考えられています。
30歳を過ぎた女性の生理痛がひどい場合、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因になっていることがあります。痛みがひどくなる一方だったり、出血が激しい場合は婦人科を受診しましょう。
生理期間中の負担を少しでも軽くするためのポイントは、血流を良くすることにあります。
そのためのポイントは以下のとおりです。
・お腹、腰から足先までを冷やさない
体が冷えて血流が滞ると痛みが強くなります。
・軽い運動をする
体を動かすことにより血液の循環を促します。
・ビタミンE、C、B群を不足させない
ゴマ、ウナギ、カボチャ、ナッツ類、柑橘類、イチゴ、レバー、マグロといった食品がおすすめ。
血液循環を促す、あるいは体を温めるタマネギやニンニク、ショウガやココアもおすすめです。
ビタミンEの大量摂取は心臓病リスクを高める?下げる?
ビタミンEは抗酸化物質として人気がありますが、心臓病などの持病がある人が大量摂取すると危険であるとの報告が米国心臓学会で発表されました。
欧米と中国で主に高齢者を対象に行われた19の臨床試験および患者13万6000人の症状などが分析されました。
その結果、一日267mg以上を摂取した場合、最長約8年の追跡期間中の死亡率が、偽薬を飲んだ人に比べて約10パーセント高かったのです。
死亡率が高くなった原因は不明で、試験参加者の大半は持病があったので死亡の原因がビタミンEにあるとはいえないとする意見もあります。
私は一時期ビタミンEサプリを常用していたことがあります。といっても心臓病予防というわけではなく、血流を改善する目的です。ビタミンEをとっていた間は、冬でもしもやけにならなかったものです。
ビタミンEは血流を改善させ、抗酸化作用もあるので私は心臓病の対策にビタミンEは有効だと思っていました。
実際に、アメリカで看護士を対象にした研究では、ビタミンEを最も多く摂取した看護士は心臓病になるリスクが30~40%低くなったという結果が出ているそうです。
また、フィンランドで30歳から69歳までの男女を調査したところ、ビタミンEの摂取と心臓病のリスク低下には関連性があることも確認できたとか。
ビタミンEは心臓病に良いのか悪いのか迷うところです。私個人としては、過剰摂取しない限りはメリットの方が多いと思うのですが。
ビタミンEの功罪まとめ
ここでは、ビタミンEのメリット・デメリットをまとめます。
このページで紹介した内容に加え、これまでに見聞きした内容もお知らせします。
まずはビタミンEの概要から。
ビタミンEの特徴
・脂溶性で熱や酸には安定しているが、酸化されやすい
・活性酸素を抑制し、過酸化脂質の増加を防ぐ
・多くの動植物食品から摂取でき、体内に貯蔵されるため、欠乏は少ない
・脂溶性ながら過剰摂取および過剰症の心配があまりない
・サプリなどで極端に摂取すると血が固まりにくくなることがある
・ビタミンCとの組み合わせで抗酸化作用が高まる
ビタミンEを多く含む食品
・植物油 バター 豆類 ゴマ アーモンドなど種実類 卵黄 緑黄色野菜
ビタミンEのメリット
・肌・・・しみの発生を抑制する
・血管・血液・・・血行不良による肩こり・冷え・しもやけを防ぐ
・生殖器・・・月経不順や不妊などの生殖機能不全を防ぐ 生理痛軽減
・全身・・・抗酸化作用により細胞の再生、老化防止 発がん抑制
・トマトリコピンとビタミンEで前立腺がん抑制
・心臓病リスクを低下
ビタミンEのデメリット
・前立腺がんのリスク上昇
・骨量低下のリスク上昇
・心臓病のリスク上昇
まとめてみるとわかるように、功罪で真逆の作用があります。
「リスクを下げる」かと思うと「上げる」との主張があり、なんじゃそりゃ、と突っ込みたくなります。
よくわからなくなってしまいそうですが、私としては、「ほどほど」の量を摂取すれば、良い作用をもたらしてくれると考えています。
ビタミンEは過剰症の心配が少ない栄養素です。
しかし脂溶性で体内に残るので、サプリによる大量摂取を習慣にしていたら、体内の蓄積量も不自然に多くなる可能性はあります。
そうすると、過ぎたるは何とやらで、体に良くない面が出てきても不思議ではありません。
適量であれば、血流改善などの良い作用をもたらしてくれるはずです。
寒くなる時期、特に女性は試してみてはいかがでしょうか。