徳川幕府で家康、秀忠、家光と三代の将軍に仕えた高僧、天海は107歳で大往生しています。
 
しかも認知症になることなく、頭脳明晰のまま亡くなったのですから、時代を考えるとまさに驚異的です。
 
(このコンテンツは2011年2月9日付 九州スポーツ新聞 若林利光医師「偉人たちに学べ 長寿の道しるべ」を参考にしています)
 
健康オタクの家康も天海に長生きの秘訣を尋ねています。
天海は次のように答えました。

「長生きは、粗食、正直、日湯、陀羅尼(だらに)、ときおり下風(げふう)あそばれかし」
 
粗食は文字通り「質素な食事」です。といっても、美食に対する「粗食」であり、「粗末な食事」というわけではありません。
 
「正直」とは「自分に正直に生きる」という意味で、後悔や心の乱れを無くし、精神の平静を保つために必要な要素です。
 
「日湯」は入浴で、風呂に入って信心する大切さを説いています。
 
「陀羅尼」とは「比較的長い呪文」のことで、お経を読んで邪念とストレスを無くし、心の安定を保つ意味があったと考えられます。
 
「下風」とは「おなら」のことで、我慢してはいけない、と説いていました。
 
「陀羅尼」や「正直」など精神面を強調しているように、天海は「恬淡緩慢(てんたんかんまん)」という言葉も残しています。
 
無欲であっさりとして、ゆったり焦らず、くらいの意味で、ストレスに悩まされないことが長寿の秘訣としていたのです。(現代社会ではなかなか難しいかもしれませんが・・・)
 
天海は、若菜の炊き込みご飯と、きな粉、納豆が好物でした。良質のたんぱく質にビタミンBなど、身体と脳に良い食べ物を常食していたのです。天海が死の直前まで頭脳明晰であった理由とひとつと言えるでしょう。さすがに大豆食品ですね。
 
ちなみに天海は、将軍が亡くなる際には延命の祈祷を行いましたが、自身の死に臨んでは祈祷を止めさせています。
 
「まもなく定められた寿命が尽きる。それは祈祷や薬で治るものではないこの世にはできないとされていることがあるのだ」
 
との言葉を残し、1643年11月13日(旧暦の10月2日)にこの世を去ります。