オペラ歌手の錦織 健さんは、
 
「長生きをしようとも、健康でなければいけないとも思っていない」
 
のですが、

「風邪だけはひかない」
 
と心がけています。
 
(このコンテンツは2012年1月28日 日経プラスワン 「食の履歴書」コーナーを参考にしています。当コンテンツの内容は記事掲載当時のものです)


錦織さんは国立音楽大学声楽科への進学を機に、一人暮らしを始めます。
 
同時に、食への意識が低かった錦織さんは、好きなものばかり食べるようになりました。晩御飯はポテトチップス3袋、なんて日もあったのです。
 
そんな生活をしばらく続けているうちに、体重が一気に増え、吹き出物が出るようになります。医師からはアレルギーと診断され、風邪もよくひくようになりました。
 
それでも「食事が人生に関係しているなんて考えもしなかった」ので、食生活は変えなかったそうです。
 

 
しかしある日、風邪のせいで声が出ないまま、歌の試験を受けることになりました。もちろん歌の評価は散々でした。
 
それ以来、
 
「声楽家が風邪をひくのは、音楽家が楽器を壊すようなもの」
 
と気付き、風邪をひかない食事を研究するべく、健康に関する本を読み漁り始めます。
 
大好きだったジャンクフードは口にしなくなり、野菜と穀物の毎日に変わりました。肉は、大豆と小麦から作った人工肉を食べます。
 
結果として体重は減り、風邪もひかなくなり、大学時代はこの食生活を通しました。
 
大学卒業後、20代後半になってイタリアのミラノに留学するころには、「動物性たんぱく質も全て悪いわけではない」と考えるようになり、肉も食べていました。
 
留学中も野菜をたくさん食べていましたが、この頃から、錦織さんは週一回の「調整日」を作るようになります。この日は果物とドライフルーツしか食べないのです。
 

 
調整日は50歳を超えても続けています。
 
錦織さんは実は大食漢で、お弁当を3つ食べることもありますが、これができるのも調整日があるから、なのだそうです。
 
たくさん食べるといっても、米は胚芽米を中心にするなど、食材は選んでいます。
 
これだけ注意している錦織さんでも、風邪をひいてしまうことはあります。
 
2009年には5年ぶりに風邪をひき、自らプロデュースする公演の主役を一度休んでしまいました。
 
死ぬほどつらい決断でしたが、
 
「風邪の時の喉は自分で制御できない。楽器に穴が空いたようなもの」
 
だったのです。
 

 
現在も健康に関する記事には目を通していて、風邪をひかないための研究は続けています。
 
しかし錦織さんいわく
 
「でも、50歳にしていまだ結論は出ず、です」
 
ちなみに錦織さんは、最後の晩餐では、大学時代のようにカップめんやポテトチップスなどを好きなだけ食べたいそうです。
 
というのも、
 
「翌日以降歌わないのなら、風邪をひく恐怖から解放されるから」