糖尿病は「万病のもと」です。
ありとあらゆる病気の原因になる、と言っても過言ではありません。しかもいずれも重篤な症状をひきおこすものばかりです。
このコンテンツでは、よく知られた三大合併症に加えてあと二つ、糖尿病により発症リスクが上がる病気について紹介します。
糖尿病により心臓病のリスク増加 「予備軍」でも要注意!
糖尿病というと、
・糖尿病網膜症
網膜の血流が悪くなり、視力の低下や失明の原因になる。
・神経障害
手足のしびれや筋力低下、EDなど自律神経障害を発症する。
・腎臓障害
腎臓の糸球体の機能が落ちる症状で、進行すると人工透析が必要になる。
といった合併症がよく知られています。
いずれも重篤な症状であり、何としても予防されるべきですが、糖尿病はこれらに劣らず深刻な疾患リスクも上げてしまいます。
その「深刻な疾患」とは心臓病です。
大阪成人病センターの調査では、糖尿病を患ってる人は、そうでない人に比べて狭心症や心筋梗塞などにかかるリスクが約3倍高くなるそうです。
さらに、日本循環器病センター統計では「不安定狭心症または心筋梗塞で入院した患者の7割は糖尿病あるいはその予備軍」だったことがわかっています。
糖尿病と心臓疾患の関係はヨーロッパでも指摘されていて、07年9月に開かれた欧州糖尿病学会では「糖尿病患者は高脂血症の治療を十分に行わないと心臓病のリスクが高まる」と報告されました。
ちなみにアメリカでは糖尿病患者の半分以上が心臓病で亡くなっています。
糖尿病をすでに発症していると食事などをきちんと管理することが多いですが、怖いのは糖尿病予備軍の人達が自分の生活習慣に無頓着なケースです。
現在、成人の6人に1人は糖尿病予備軍だそうです。
先の日本循環器病センターの統計でもわかるように、たとえ「予備軍」であっても心臓疾患リスクは高まるのです。
心筋梗塞などは発症したら生命の危機に直結します。
健康診断などで「糖尿病予備軍ですよ」といった注意を受けた場合、命にかかわる心臓病の予備軍でもある、という意識を持つ必要もあるのではないでしょうか。
糖尿病は白内障のリスクも上げる 手術もできなくなる
糖尿病が発症リスクを上げる病気は、心臓病だけではありません。
白内障のリスクも上げてしまいます。
糖尿病による白内障は加齢とは関係ないため、30代と若い年代でも発症し、しかも進行の速度が速いとされています。
糖尿病が白内障を起こすメカニズムははっきりとはわかっていませんが、糖尿病により代謝されなくなった糖分が目の水晶体にたまり、それがソルビトールという物質に変わって水晶体を白濁させるという説が有力です。
加齢による白内障であれば、眼内レンズ移植手術などの対処が可能であり、またこれらの手術は精度が非常に上がっているため術後の経過も良好です。
施術例も増え、手術へのハードルも低くなっているようです。
しかし糖尿病による白内障ではそうはいきません。
血糖値が高いと手術合併症のリスクが高まるので手術自体ができないのです。
そのため、白内障への対処以前に血糖値のコントロールを優先しなくてはいけません。
「糖尿病発症の低年齢化が進んでいる」と言われるように、糖尿病白内障にかかる若い人も増えています。
糖尿病は、あらゆる手術の妨げになります。
何らかの病気にかかって手術が必要になった場合でも、患者が糖尿病あるいはその予備軍の場合、手術がすぐに行われないことがあるのです。
血糖値が高いと感染症にかかりやすくなったり、傷口がふさがりにくくなります。
手術自体は成功しても、糖尿病だと術後に感染症などを起こして容態が悪化する可能性が高くなってしまうのです。出血が止まりにくくなることもあります。
ちなみに私も経験した、近視矯正のレーシック手術は糖尿病では受けることができません。
とはいえ「糖尿病だと手術はできない」というわけではなく、血糖値が落ち着けば手術は行われます。
手術は可能とはいえ、延期されるということはその分対処が遅れるということです。
やはり何よりも糖尿病にならないことをまずは心がけましょう。