貧血は鉄分不足で起こることはよく知られています。
では、鉄分が不足するとなぜ貧血になるのでしょうか?
その答えとしては「ヘモグロビンが作られなくなるから」ということになります。
ヘモグロビンは鉄とたんぱく質から作られていて、全身に酸素を運ぶ役目を持っています。
材料である鉄が無いとヘモグロビンは作られず、「酸素の運搬役」も不足してきます。
すると体内が酸欠状態になってしまいます。貧血の症状のひとつである動悸は、酸欠状態にある体を助けるために血液循環を盛んにしているのです。
貧血になるとちょっと体を動かすだけで息切れしたり、体が疲れたりするのは体内に酸素が足りないために起きる症状なのです。
女性に貧血が多いのは、女性は生理の際に定期的に鉄分を失ってしまうからです。
男女を問わず人体は毎日1mgの鉄分を排出しています。女性はこれに加えて生理時に15mg~30mgの鉄分が体外に出てしまいます。
さらに女性はダイエットを意識することが多いので、偏食などで鉄不足に拍車をかけることがあります。
鉄分の多い食品と推奨摂取量
鉄分はレバー、イワシ、小松菜、納豆、ほうれん草といった食材に多く含まれています。
鉄分は食べた分の10%ほどしか吸収されません。上記の食品が苦手という場合、サプリを利用するのも良いでしょう。ただし、鉄分は過剰摂取による弊害も報告されています。
厚生労働省の食事摂取基準(05年)によると、1日あたりの推奨摂取量は
・成人女性 10.5mg
・妊娠中の女性 19.5mg
・成人男性 7.5mg
となっています。
血中ヘモグロビンの量は、献血をすると検査結果としてもれなく教えてもらえます。
大まかな標準値(資料により数字には若干差があります)は1デシリットルあたり
・女性 11~15g
・男性 13~17g
といったところです。
意外と怖い貧血 鉄欠乏以外の理由 子宮筋腫や男性でも
貧血の主な原因は鉄分不足ですが、それ以外の理由で貧血症状を起こすこともあります。
この場合、単なる貧血よりも重い疾患が原因になっていることがあるので注意が必要です。
摂取する鉄分は十分なのに貧血になるケースでは「何らかの疾患により体内で出血が起きている」ことが考えられます。
この疾患が曲者です。
まず、女性に多いのが子宮筋腫による貧血です。
どうも調子が悪く、貧血に似た症状が出るので診察を受けて詳しく調べたところ子宮筋腫が見つかった、という例があります。
すぐに息切れする、疲れやすい、めまいがする、血中ヘモグロビン量が極端に低下するといった貧血の典型的な症状の他、生理時に大量の出血(血が塊になって出ることも)を伴うこともあります。
こうなると貧血対策だけでなく手術も視野に入れた対処が必要になります。
また消化器系のがんや潰瘍があると体内の出血が少しずつ続くことがあります。
この状態が続くと体内の血液(ヘモグロビン)は当然減り続けるため、貧血になってしまいます。
そしてこの貧血は男性にも起こりえるのは留意すべき点です。
男性は食べることに対して抵抗が無い場合が多く、女性に比べて鉄分不足になることは少ないのです。
結果的に男性に貧血はあまり起きないのですが、それだけに男性が貧血を発症した場合は潰瘍やがんの可能性が高いため注意しなくてはいけません。
性別を問わず「食事は偏っていないのに、貧血っぽいなぁ」という場合は念のために診察を受けましょう。