最近は「飲酒は体に良くない」旨の報告が目立ちますが、08年3月7日に発行されたアメリカの医学雑誌「AJM」には「飲酒は心筋梗塞のリスクを大幅に減らす」との研究結果が発表されています。
 
サウスカロライナ大学のキング博士らのグループは、研究開始時点で飲酒をしていなかった45~64歳の男女7697人を10年間にわたって調査しました。
 
調査期間中、6%の人が飲酒をするようになり、飲酒しない人との比較ができるようになりました。

調査の結果、適度な飲酒をする人は心血管疾患が38%も少なくなったそうです。この調査には喫煙、高血圧、肥満といった要素も加味されています。
 
ここでの「適度な飲酒」とは1日1~2杯程度で、飲みすぎはもちろんいけません。調査ではワインの効果が特に高かったそうです。
 
飲酒に関しては、判断がなかなか難しいところですよね。
 
「飲酒はほとんどの種類のがん発症リスクを上げる」のはほぼ定着した感がありますし、「お酒は百薬の長とは必ずしも言えない」という印象は強くなっています。
 
しかしこの調査によると、お酒は循環器に関しては良い影響を及ぼすと言えるようです。何事もそうですけど、お酒にも一長一短があるのでしょう。
 
家族や親戚にがんを発症した経験がある人はお酒を控え気味にして、循環器系の病気が心配される場合はお酒を適度に楽しむ、というのが良さそうです。
 
ただ、休肝日無しに飲み続けるのは絶対的に良くないと言えると思いますが。

お酒はやっぱり循環器系には良い?スペインの調査

お酒が循環器系に良い影響を及ぼす、という調査結果はスペインでも報告されています。
 
「飲酒は冠動脈疾患のリスクを下げる」そうで、結果を簡単にまとめるとこんな感じです。
 
・男性であれば、飲酒は冠動脈疾患を防ぐ作用がある
・その効果は、飲酒量がある程度まで増えると強くなる

 
この調査は29~69歳のスペイン人男女4万人以上を対象に、10年にわたり行われました。
 
その結果、全く飲酒をしない人に比べて、毎日のアルコール摂取量が
 
・0.5gの人は35%
・5~30gの人は54%
・30~90gおよびそれ以上の人は50%

 
冠動脈疾患にかかるリスクが低くなりました。(お酒の種類は関係ありませんでした)
 
こうしたリスク低減効果は男性にみられるもので、女性にも同様の傾向はあったのですが、この調査では統計的に有意な結論は出なかったとのこと。
 
この結果では「お酒はある程度飲んだ方が冠動脈疾患によりかかりにくくなる」と言えそうですが、飲み過ぎは別の病気のリスクを上げてしまう可能性があるのは言うまでもありません。
 
スペイン人と日本人ではアルコール分解酵素の量が違うなど、人種的な違いも考慮に入れる必要があるでしょう。
 
「体質などを考慮しつつ、何事もほどほどに楽しむ」くらいの意識でいるのが一番良いのではないでしょうか。