コレステロールというと、いまだにあまり良くないイメージがあるのではないでしょうか。
「血管内にできる血栓、つまりプラークの原因物質であり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める物質」という認識ですね。
これは確かに間違いではないのですが、コレステロールは害でしかないのかというと、そうではありません。
コレステロールは血管の材料のひとつ ご長寿さんは肉好きが多い
コレステロールは血管の組成には不可欠の成分で、これが欠乏すると血管は弾力を失い、破れやすくなります。
脳出血などのリスクが上がってしまうのです。
戦後の高度成長期の前あたりまでの日本人は、肉をあまり食べず、コレステロールの摂取量も低いままでした。
そのため脳出血で亡くなる人が多かったのです。
その後肉を多く食べるようになると、脳出血の発症数は減っていきます。
こうした事実が周知されるようになってから、お年寄りも肉を食べたほうがよい、という主張が多くなってきました。
健康を維持しているご長寿さんの多くが、肉を好んで食べているのです。
年をとると食が細くなり、健康のために肉を敬遠する、という人もいますが、それは必ずしも正解ではありません。
食の好みがあるとはいえ、何らかの形で肉を献立にとりいれてみましょう。
がんに関して言えば、総コレステロール値が低いと、男女の肝臓ガン、男性の胃ガンの発症リスクが高い、という研究結果もあります。
コレステロールは低いほど良い、というわけではなく、高すぎず低すぎず、ほどほどが一番なのです。
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- コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる
LDLコレステロールの働き 感染症や肝炎を防ぐ
「コレステロール値は高いほうが長生きする」という説も知られるようになり、
コレステロール値が高い=悪!
という認識は少なくなりました。
しかし「悪玉コレステロール」という、ネガティブ以外の何物でもない名前をつけられていたLDLコレステロールに対しては、いまだに「悪」イメージが強いのも確かです。
富山大学の浜崎智仁名誉教授は、LDLコレステロールも高いほうが良いと主張しています。
そもそもコレステロールは細胞膜を構成する主要成分です。コレステロールが不足すると細胞の再生が阻害されたり、働きが阻害されるなどして免疫力も低下します。
悪玉とされるLDLコレステロールであっても、数値が高いほど感染症にかかりにくい、というデータもあります。
1987年から2006年にかけて、神奈川県伊勢原市で行われた調査では、LDLコレステロール値の高い人のほうが、肺炎での死亡率が少なく、総死亡率も低いという結果が出ています。
LDLコレステロールが高いと感染症を予防できるのはなぜでしょうか?
細菌やウイルスは、体内に入っただけでは害はありません。細菌の場合、時間を経て毒素を出したり破片になって炎症を起こします。ウイルスも宿主の細胞に入って悪さをします。
LDLコレステロールは、体内に侵入してきた細菌やウイルスを取り囲むようにくっつく性質があります。毒素も取り囲んでしまうため、細胞に接するのを防いでくれます。
この作用は試験管レベルでも確認されていて、ラットを使った実験でも「高コレステロールのほうが感染症に8倍強い」との結果が出ています。
高齢になると、肺炎も死亡原因のひとつとして挙げられるようになります。肺炎は感染症なので、年をとったら高コレステロールのほうが理想的なのです。
肝炎の死亡率も高コレステロールのほうが低いとの研究結果もあります。
特にC型肝炎ウイルスは、LDLコレステロールと同じ受容体を利用しています。
そのため、ウイルスの周りにコレステロールが多ければ、ウイルスが細胞に入りにくくなり、肝炎の発症が予防できるのです。
(このコンテンツは雑誌「壮快」2016年1月号32~33ページを参考にしました)
壮快 2016年1月号