臓器の中では目立たないイメージがありますが、腎臓はとても重要な働きをしています。
糖尿病などで腎臓の働きが弱ると生活の質が著しく落ちてしまうことからもそれがわかります。
このコンテンツでは腎臓の働きや腎臓病のリスクが高い人、腎臓のいたわり方をまとめています。
1日に原尿150リットル!働きものの腎臓
腎臓は毎分1リットルの血液をろ過し、尿の元になる原尿を1日に約150リットルも作っています。
血液から不要な成分や有害成分を取り除いてキレイにしているわけです。
その作業を毎日毎日150リットル行うのは、小さな臓器にしてはかなりの激務といえるのではないでしょうか。
原尿に含まれる水分、アミノ酸、ブドウ糖などは腎臓を通るうちに再吸収され、尿になり体外に排出されるのは原尿のわずか1%、1.5リットル程度です。
いったんろ過しておいて、不要分を排泄するだけでなく使えそうな体内資源を再利用しているわけです。
腎臓はまさに「働き者で倹約家な臓器」なのです。いま風に言うなら「エコな臓器」でしょうか?
腎炎・ネフローゼ・腎不全などの疾患で腎臓の機能が失われると、元に戻りません。
これだけの”働き者”が働けなくなる損失は甚大です。生命に関わるのは容易に想像がつきます。
腎機能が低下すると、生命維持のために人工透析が必要になります。1回あたり5時間、週に3回ほど(時間や頻度には症状によって差があります)の透析を生涯続けなくてはいけません。
生活への負担は非常に大きくなってしまいます。
たんぱく質や塩分、水分の摂取を厳しく管理する必要があるので食事にも様々な制限がかかるようになります。
また腎臓機能が低下すると、特定の病気のリスクが上がることがわかっています。
腎機能低下でリスクが上がる循環器疾患 注意すべき人
腎臓の不調は、心血管や脳血管の疾患リスクを上げます。
腎機能が低下して尿にタンパクが出ている状態は、心筋梗塞や脳卒中が発症しやすくなるのです。
「腎臓と心臓・脳の血管」というと一見無関係のようですが、こうした報告は世界各国から出されています。
ここでいう「腎臓の不調」とは、腎不全などのいわゆる「重い症状」ではありません。軽い不調であっても心筋梗塞などのリスクは高くなるのです。
つまり「腎臓が軽い不調にある」状態であっても改善する必要があるわけですが、厄介なことに腎臓疾患の初期には自覚症状がほとんどありません。
ある程度症状が進むと
・食欲が低下する
・脚がむくむ
・排尿の際に泡がたつ
といった現象が見られますが、こうした症状は出た時点で腎疾患がかなり進んでいることもあります。
そのため腎疾患を早期に発見するには、定期的な尿検査や血液検査が欠かせません。
腎疾患にかかりやすい人の例としては次のようなものがあります。
・血圧が高い
・痛風や糖尿病(の予備軍)である
・肥満およびメタボリックシンドロームである
・喫煙習慣がある
腎臓を健康に保つには、バランスの良い食事、減塩、適度な運動、禁煙、お酒は適量飲む、といったことが必要です。
つまり「生活習慣病の予防のために」としてよく知られている内容そのままなのです。
これらはほぼ常識になっているはずなのですが、腎臓を患う人の数は増えているようです。腎臓をいたわるポイントとともに次の記事で紹介します。
富野康日己教授の「腎臓をいたわる10ヶ条」生活習慣のポイント
腎臓を悪くする人が増えています。
末期の腎不全で透析が必要になる人は現在27万人を超えていて、透析予備軍は1300万人以上という統計もあります。
順天堂大学医学部腎臓内科教授の富野康日己教授は「腎臓をいたわるための10ヶ条」を提唱しています。
その10ヶ条は、以下のとおりです。
1 早寝早起き
2 排尿を我慢しない
3 カゼをひかない
4 身体を清潔にする
5 高血圧、糖尿病、痛風をしっかり管理する
6 ウォーキングなど腎臓に負担をかけない運動をする
7 ストレスをためない
8 喫煙や暴飲をやめる
9 十分な睡眠、休養をとる
10 必要な薬以外は飲まない
腎臓は肝臓と同じように「沈黙の臓器」と呼ばれています。異常が発生しても自覚症状がほとんど無いのです。そのため、早期発見には健康診断を受けるしかありません。
少なくとも年に1回は自分の身体をチェックし、尿や血清クレアチニン値などを調べてみましょう。
腎臓の状態が悪化しているのを検査せずに初期の時点で感知するのは極めて困難です。
腎臓病は対処が非常に難しい病気でしたが、最近は医療技術の進歩により早期であれば治療可能になっています。
ガンや生活習慣病に比べると話題が少ない腎臓疾患ですが、生活の質を保つためには腎臓の健康にも十分留意しなくてはいけません。