健康トピックでは、脳に関する話題はちょっとマイナーなイメージがあります。
美容やダイエット、筋トレといった話題に比べると、興味を持つ人はかなり少ないのではないでしょうか。
しかし言うまでもなく、脳は人体で最も重要な器官です。脳の調子を整えれば、体全体に良い影響があるのは間違いありません。
このコンテンツでは、脳に良いこと・悪いことをまとめました。
脳に良いこと 運動や習慣
「脳に良い」といわれる習慣や運動には、以下のようなものがあります。
ウォーキング
セロトニンが分泌されて脳がリラックスし、集中力がアップします。
風景を見る、外界の音を聞く、臭いをかぐ、などが脳に良い刺激を与えるのです。
大腿筋を刺激することも、脳にいいもう一つの理由です。歩行に限らず、腕立て伏せや柔軟体操など、筋肉を刺激する運動であればいずれも脳を活性化させます。
大腿筋は体内で最も太い筋肉なので、神経内を行き来する情報量も多くなり、刺激の効率が上がります。
よく噛む
粉末えさを与えたねずみと固形えさを与えたねずみでは、後者が迷路テストなどでよい成績を残すことが知られています。
「食べる(噛む)」という行為は、人間の五感(視・聴・嗅・味・触)を全て刺激する動作です。つまり幅広い情報が脳に伝わり、大脳の広い範囲を興奮させることができるのです。
さらに、よく噛むことは脳への血流を増やします。
噛むことのもう一つの効能として、コレシストキニンというホルモンを消化管から分泌することがあります。このホルモンは海馬を刺激して記憶と学習能力を高める働きをします。
指先を使う
裁縫や折り紙、ピアノやバイオリンなど楽器の演奏、あるいは日曜大工などはいずれも脳を鍛えるのに理想的です。
体が動くのは、大脳新皮質の運動野からの命令によるものです。手や指といった部分をコントロールする運動野の神経細胞数はとても多く、指先を使うことは脳の広い範囲を刺激するのです。
水中で運動する
「水泳は全身運動である」とよく言われるように、水中で姿勢を保つためには全身の筋肉を微妙にコントロールしなければいけません。
前述のように筋肉を刺激することはイコール脳を刺激することなので、地上での運動では得られない質・量の刺激が水中での運動では脳に届くことになります。
脳を若く保つ秘訣 人との交流や会話 「左脳お休みの日」も
「いろんな人・事と交流を持つ」ことは、脳を若く保つ秘訣です。
具体的には・・・
・過去の実績、経験、自慢に固執せず新しいものを取り入れる
・流行も積極的に取り入れてみる 理屈よりも行動する
・IT機器も苦手なりに使ってみる
・詳しくない話題を会話中に振られても「あまりわからないので・・・」と終わらせてしまわず、自分の知ってる範囲で会話を続ける努力をする
といったことです。
全く知らない場合は「それどういうものか教えて」と聞けば、そこからの話題は自分の世界を広げてくれる内容100%です。
いろんなことに興味を持つと同時に、ひとつ強烈に熱中できる趣味を持つのも大事です。
その他、
・自分をほめる
・説教をせず、失敗談をたたき台として話す
・人の話を聞き、他人を認め、その人の長所を探す
なども有効です。
現代社会はとかく左脳を使いがちなので、時には絵を描く、歌を歌う、音楽を楽しむ、といった「右脳を刺激して左脳はお休み」の日を作ると脳を若く保つ助けになります。
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脳に悪いこと 高温や衝撃
脳は最重要臓器のひとつであり、脳へのダメージは、即生命の危険につながります。
日常の珍しくない環境や動作でも、脳にダメージを与えうることがあります。
以下にまとめます。
脳を高温にさらす 熱中症が典型例
熱中症にかかると、この状態になります。
脳が耐えられる限界の温度は42~42.5度で60分、43度で10~20分とされています。
脳を構成する組織(神経細胞、グリア細胞、毛細血管など)のなかで、熱に最も弱いのは神経細胞です。
熱中症の主症状として頭痛やめまいといった神経症状が真っ先に現れるのはこのためです。
脳への衝撃 ボクシングやサッカーのヘディングなど
脳は豆腐のように柔らかい臓器なので、頭部への衝撃が脳に良くないのは容易に想像がつきます。
典型的な例はボクシングです。試合経験の多いボクサーほど脳の萎縮が進むことがわかっています。(下にパンチドランカー症状についてまとめています)
頭部へ衝撃を与えるその他の例として、スキーやスノーボードの転倒時、サッカーのヘディングなどがあります。
2002年の1月、イギリスの元プロサッカー選手が脳の損傷により亡くなりました。彼はヘディングが得意で、現役時代はゴールのほとんどを頭で決めていました。
脳を検視した結果、ボクサーが受ける傷に似た損傷が見つかっています。
ゴルフクラブの大振り
肩や首に力が入った状態でクラブを大振りすると首がひねられた状態になることがあります。
すると頚動脈がねじれて傷つき、血管壁がコブ状に膨らむため脳への血流が著しく少なくなります。
結果として頭痛や嘔吐、手足の麻痺をひき起こすことになるのです。
二ヶ月半も入院し、退院後も足のふらつきが残った症例もあります。
喫煙
タバコを吸うと頭がさえる、という人がいます。
確かに、少量のニコチンは覚醒・集中力増大などの効果が認められていますが、これらはほんの一時的なものです。喫煙習慣は長期的には脳に悪影響を及ぼすことがわかっています。
タバコを吸う人は吸わない人に比べてIQが5ポイント近く低下し、知識力、洞察力、瞬間の判断力でも明らかに劣っているという研究結果もあります。
この原因としては、タバコの煙に含まれている一酸化炭素とアセトアルデヒドが脳の神経細胞にダメージを与えるからだと考えられています。
パンチドランカー症状について 現在は減少
ボクシングWBC世界スーパーフライ級王者(06年2月 現在)徳山昌守選手は、試合前に遺書をしたため、試合後に破り捨てているそうです。
一昔前まで「パンチドランカー」という言葉がよく使われていました。これはパンチを受けて脳にダメージを負ったボクサーに特有の症状で、様々な機能障害が発生します。(下記参照)
鍛えられたボクサー同士の殴り合いは、脳の機能に不調をきたすほど壮絶なのです。徳山選手の「遺書」は深刻過ぎるかもしれませんが、ボクシングの過酷さがよくわかるエピソードです。
パンチドランカー症状に言及した本は、実はあまりありません。
管理人が利用している図書館を調べてみても、同症状をメインでとりあげた資料は見あたりませんでした。章の一部で簡単に扱ってあるものがほとんどです。(書蔵庫を探してもらえばあったのかもしれませんが)
ボクサーの脳を調べると、大脳新皮質に萎縮が見られるケースが多く、成功をおさめている、あるいは試合数の多いボクサーほど萎縮が進んでいるとの調査結果もあります。
脳は豆腐のように柔らかい臓器なので、頭部へのパンチの衝撃が脳にダメージを与えることは容易に想像がつきます。
パンチドランカーでは以下のような症状が見られます。
・人格障害(感情易変、暴力などの攻撃性増大、幼稚、性的羞恥心の低下、病的嫉妬、被害妄想など)
これらの症状が進むと社会生活を営むことが困難になります。
ただし現在は、「パンチドランカー」という言葉自体が死語になっている印象があります。
これは最近のボクシング界がボクサー保護に力を入れており、選手が脳に深刻なダメージを受けるケースが減っているからと考えられます。
好ましい傾向ではありますが、競技中の事故はいまも時折発生します。ボクシングが危険で過酷な競技であることに変わりはありません。