このところ日本の夏は、「猛暑」「酷暑」といった表現が当たり前になってしまいました。

40度手前の気温は日常茶飯事、40度超えも珍しくなくなっています。
 

 
気温が上がると、注意しなくてはいけないのは何といっても熱中症です。近年の気温上昇傾向とともに、発症者数も増加しているようです。
 
熱中症についてまとめてみました。

熱中症の症状や起きやすい時期と環境

熱中症で救急搬送される患者は梅雨明け後に集中しています。
 
毎年必ず、注意喚起はされているのですが、熱中症を発症する人はゼロにはなりません。不幸にして亡くなる方もいます。
 
熱中症は日射病、熱けいれん、熱疲労、熱射病に分類されます。
 
前者二つは体温上昇がなく、後者二つは体温上昇を伴います。いずれもめまい、けいれん、嘔吐などが代表的な症状です。
 
厚生労働省の統計によると、1994年以降05年まで毎年全国で200人以上が熱中症で亡くなっています。多くは65歳以上の高齢者です。
 
以前から少なくない死者が出ていたのです。
 

 
気温だけでなく、湿度が高い環境も危険で、同時に風が吹いていない状態は最悪です。汗をかいても蒸発しないため体温が下がらないからです。
 
雑誌「週刊文春」に、熱中症を起こしやすい状況をまとめた記事があったので、ポイントを整理して紹介します。
 
(このコンテンツは、雑誌週刊文春 2013年 8/22号172~173ページを参考にしています)




自宅でも熱中症に注意 起きやすい部屋

熱中症は、炎天下で起きるというイメージがありますが、救急搬送される患者の4割は自宅で発症しているそうです(その中の7割以上が65歳以上の高齢者)。
 
室温が30度、湿度が60~70%を超えると熱中症リスクが高まります。
 
自宅で熱中症リスクが一番多いのはリビングです。自宅での熱中症の約4割はリビングで起きています。
 
リビングは室内を明るくするために窓が大きく、日射しが多いのです。
 
西日が差しこむ西向きの部屋は特に危険で、コンクリートの集合住宅だと夕方4~5時頃が温度上昇のピークに達します。
 
この時間帯は注意が必要です。
 

 
次に危険なのは寝室です。
 
高齢者は、暑い日が続く数日間で少しずつ脱水状態が進行します。それが限界まで達した状態で、水分補給をせずに暑い寝室で寝ると熱中症を発症するのです。
 
このパターンは非常に危険で、発見された時はすでに意識がないか、手遅れといったケースが多くなります。
 
ある程度の年齢に達すると、夜中トイレに立つことを嫌って、寝る前には水分をとらない人は多いですが、大人は一晩に300~400グラムの水分を排出しています。
 
就寝中の熱中症予防のため、寝る前にコップ一杯の水を飲むよう習慣づけましょう。
 

 
キッチンは、いわば温度と湿度を上げるための場所です。加えて熱はこもりやすいので、熱中症のリスクは高い空間です。
 
ガスコンロの熱効率は40%で、残り60%は室内の空気を温めているのだそうです。
 
揚げ物や炒め物をすると5度近く室温が上がりますし、煮炊きを続けると湿度が80%を超えることも。換気扇は必ず回し、サーキュレーターなどで空気の流れを作るなどの対策をとりましょう。
 
コンロを使う調理は朝や夜に行い、日中は調理済みの料理を電子レンジで加熱する、などの工夫も良いでしょう。
 
トイレも危険です。
 
狭い個室なので室温も上がりやすく、家の中でトイレが最も暑い、というケースもあります。
 
空調のきいた部屋からトイレに入ると、あまりの暑さに辟易した経験が一度はあるのではないでしょうか。長くいるほど危険度は上がります。

自宅の屋外はここが危険

また、庭の手入れにもリスクがあります。
 
草刈りや植木の手入れの最中に倒れるケースは少なくありません。
 
アスファルトと違って、庭は涼しいイメージがありますが、水分を含んだ土があるので、意外と湿度は高くなっています。
 
しゃがんで作業していると発症リスクが特に高くなります。雨の翌日の晴れた午前中は注意が必要です。
 
いまの日本の夏は、日常生活でも熱中症対策を意識しなくてはいけません。
 
冬にカゼやインフルエンザ予防を意識するように、夏は熱中症を防ぐ習慣を身につけるべきではないでしょうか。
 

熱中症が疑われる場合の対処法

熱中症の対処では、まずベルトなどをゆるめ安静にし、なにより体を冷やすことが大事です。
 
医療機関では体液と同じ成分の薬液をわざと冷たくして患者さんに点滴することもあります。患者を日陰やクーラーの効いた屋内など涼しいところに移動しましょう。
 
体に水をかけるなどするのも良いですが、その際いきなりバシャッと水をかけるとショック状態になることがあります。霧吹きで水をかけるのがベストです。霧吹きが無い場合は服を少しずつ湿らせていきます。
 
水分も補給しましょう。
 
この際、ただの水ではなくスポーツドリンク(塩分・糖分を含む)を飲むことが大事です。水では汗で流れ出る電解質を補給できないからです。
 
嘔吐や意識障害などがある場合は一刻も早く医療機関に運ぶ必要があります。
 

 
熱中症では、自覚症状がほとんどありません。
 
他の病気と違って「痛み」「しびれ」「気分が悪い」などの兆候は少なく、「何かおかしいな」と感じたときには体が思うように動かずに手遅れ、ということが多いのです。
 
周囲に人がいれば応急措置などを施してくれる場合もありますが、ひとりで活動している際に熱中症の症状が出たら非常に危険です。
 
釣りやゴルフなど、日陰の無い屋外で長時間過ごすことの多いスポーツは特に注意が必要です。
 
熱中症は睡眠不足でも発症しやすくなります。夏場に屋外で過ごす予定があるなら、睡眠を十分とるように心がけましょう。