結核は現在でも年間約2万5千人の患者が見つかっていて、およそ2200人が亡くなっています。(この記事は2011年5月に作成しています)
日本における人口10万人あたりの結核罹患率は
日本 19.4%
カナダ 4.7%
米国 4.3%
スウェーデン 5.4%
と、先進国でも高くなっています。
症状や治療法 症状が治まっても自己判断で薬をやめてはいけない
結核の症状には以下のようなものがあります。
・微熱や倦怠感も長く続く
・悪寒や寝汗、体重減少
・たんに血が混ざる
・風邪薬を飲んでも治らない
風邪とよく似ている(というか同じ?)なため病院でも間違えて診断されることもあります。
結核は、咳やくしゃみの飛沫(菌を外に出すので排菌と呼ばれます)で周囲の人にも感染させるおそれがあることから、感染が判明した場合は隔離・入院措置がとられます。
抗生物質の服用などで排菌しなくなると、通院による治療が可能になります。
治療では3~4種類の薬を6ヵ月間服用する方法が一般的です。咳が止まるなど、症状が治まっても、患者の自己判断で服用をやめてはいけません。
薬が効かない「耐性結核菌」が発生してしまうからです。(下の記事をご覧ください)
日本は今後高齢化が進み、若い頃感染した高齢者の発病が多発すると危惧されています。最近は、外国人の労働者により結核菌が持ちこまれるケースが増えています。
細菌感染は他人事と考えず、食事や睡眠、生活習慣などに気を配り、免疫力を低下させないよう心がけましょう。
薬に耐性を持つ結核菌 XDR-TB
「これまでの薬が全く効かない結核菌」が、06年頃から医学会で取りざたされるようになりました。
結核は現在でも世界中で年間900万人が感染し、200万人を死亡させている恐ろしい病気です。
ほぼ全ての薬剤に耐性を持つ「XDR-TB」と呼ばれる結核菌が近年増えつつあるとWHOや米CDC(疾病対策センター)が警告を発しています。
従来結核の主要薬だったイソニアジドやリファンピンが効かないため、肺の一部を切除するしか治療法がない、という事態もありえるわけです。
CDCなどの発表によると、2000~2004年の間に米国ではXDR-TB感染が74例あり、世界では350例が確認されました。
国立感染症研究所の森亨センター長によると「XDR結核は自然発生したものではなく、人為的に生まれたもの」なのだそうです。
結核の治療には、最短でも6ヶ月かかります。
しかし薬を服用してよく効いた場合、症状が二週間ほどで落ち着くケースもあります。すると患者が薬の服用をやめてしまうことがあるのです。
結核菌が薬に耐性を持つきっかけになるのは、このように治療を中断してしまうことなのだそうです。
XDR結核にかかってしまった場合は、周囲の環境などを整えて療養生活に入り、自然治癒するのを待つしかいまのところ方法がありません。
森所長によると、運がよければ自然治癒しますが、そうでなければ5年ほどで死亡してしまいます。
結核菌が出現したのは300万年前!フランス・パスツール研究所の発表
05年10月、フランス・パスツール研究所の研究チームは、結核菌の出現を数万年前とする従来の説を覆す論文をアメリカの専門誌に発表しました。
それによると、結核菌は約300万年前、東アフリカに現れ、人類の移動と共に世界中に広まったそうです。
チームは、アフリカに住む結核患者から珍しい種類の結核菌を分離し、普通の結核菌の遺伝子と比べました。
その結果、約300万年前に共通の祖先から枝分かれし、進化したことが明らかになったのです。
結核というと昔は「亡国病」などと呼ばれていましたが、第二次世界大戦後は抗生物質が普及して発症数は激減しました。
そのため「過去の病」というイメージがありますが、近年になってにわかに「結核は現代でも脅威となりうる」という意識が高まってきています。
実際に日本の結核感染率は先進国中では高く、01年5月には20名の集団感染も発生しています。免疫力が落ちる高齢者の結核発症も増えています。
結核菌に感染しても、体の免疫能力が機能していれば発症を抑えられます。免疫細胞であるマクロファージが結核菌を取り込んで菌の活動を止めてしまうのです。
しかしこれはあくまでも「活動を止めた」状態であって、菌が死滅したわけではありません。菌が休止状態になるとマクロファージの消化酵素が効かなくなり、何年も行き続けることになります。
結核の研究機関の管理によって、30年以上も休止状態を保っている結核菌もあるそうです。
栄養をしっかりとる、適度な運動をして休養も不足しないようにするなど健康的な生活を心がけて免疫力・体力を衰えさせない必要があります。