2014年の3月、音楽プロデューサーのつんくさんは、患っていた喉頭がんの細胞が観察されなくなる「完全寛解」と診断されました。

しかし、ホッとしたのもつかの間、10月にがんの再発が判明してしまいます。
 
つんくさんの例のように、がんが完治したと診断された後も、5年以内に再発するケースは少なくありません。
 
無くなったはずのがん細胞が、どこから生まれてくるのでしょうか?

抗がん剤が効かないがん幹細胞 再発・転移の原因

がん細胞には二種類あることがわかっています。
 
それは普通のがん細胞と、がん細胞を生み出すがん幹細胞です。がん細胞は増殖しますが、がん幹細胞はほとんど眠った状態で増えません。
 
抗がん剤は、がん細胞が分裂する際に作用します。
 
そのため、増殖が活発な”普通の”がん細胞には効果を発揮します。しかし増殖しないがん幹細胞には効きません。
 
生き残ったがん幹細胞が活動を初めてがん細胞を生み出せば、がんが再発・転移するのです。
 
つまり、がん細胞の発生源であるがん幹細胞を叩かない限り、根治とは言えません。

がん幹細胞を増殖させて抗がん剤を使用

そこで、がん幹細胞を攻撃するための研究が進みました。
 
そのひとつが、がん幹細胞をわざと増やす方法です。
 
「がんを増やす」というと物騒な気もしますが、がん幹細胞に抗がん剤が効かないのは、増殖していないからでした。
 
ということは、増殖を促してやれば効く、ということになります。
 

 
マウスの実験では、特定のがんの細胞分裂を抑制する遺伝子は特定されています。
 
その遺伝子を破壊してがん幹細胞の分裂を促したマウスでは、抗がん剤が効果を発揮して完治することが確認されています。
 
人間でも同様の治療を施すための研究が進んでいます。