耳鳴りの治療法のひとつに「TRT」があります。
TRTとはTinnitus Retraining Therapyの略で、「耳鳴り順応療法」と訳されます。
耳鳴りに慣れるのがTRT 改善率は1年で7~8割
その訳からもわかるように、「耳鳴りを消してしまう」治療法ではありません。
「耳鳴りに慣れてしまう」ものです。「耳鳴りを気にしないようにする治療法」とも言えます。
耳鳴りが苦痛なのは、その「キーン」といった音を意識してしまうからで、いったん意識してしまうと耳鳴りが四六時中気になって多大なストレスを感じるようになります。
それでは耳鳴り音を意識しないようにすればいいのではないでしょうか?
日常生活で常に耳にしているはずの冷蔵庫・エアコンの動作音や、窓の外の雑踏や車の音と同じように耳鳴りを気にしなくなったら、ストレスも軽減されることになります。
耳鳴りの原因を突き止めるのは難しい場合が多く、根治は望めないこともあります。それなら耳鳴り自体を苦痛でないものにすればよい、という発想からTRTが生まれたのです。
TRTでは患者は耳に補聴器のような器具(TCI と呼ばれます)を着け、常に一定の音が聞こえている状態になります。
同時に耳鳴りも起こっているわけですが、意識はTCI からの音に向けられるので、耳鳴りの不快感が軽減されます。
いわば耳鳴りを「気にしない」状態になっているわけです。
このTCI を一日4~8時間着け、1~2年という単位で治療を続けます。
根気が必要な治療法ですが、改善率は1年で7~8割に達するという統計もあります。
高い効果が期待できますが、TRT療法を行っている医療機関はまだ少ないようです。