生活習慣は臓器に記憶される 慶応大学医学部 伊藤裕教授

以前読んだ「週刊文春」に、”臓器メモリー”についての記事がありました。
 
臓器メモリーとは何かというと、
 
 
生活習慣は記憶される
 
 
ことだと私は解釈しています。
 
”マッスルメモリー”という言葉がありますよね。

筋トレを続けて筋肉をつければ、しばらくブランクがあって筋肉が減っても、トレーニングを再開すればすぐ以前の筋肉量に戻る、というアレですね。
 
まさに筋肉が「覚えている」わけです。
 
 
ということで、「臓器が覚えている」のが臓器メモリーです。
 
何を覚えているのかというと、「その臓器がやってきたこと」です。
 
例えば腎臓なら、「腎臓が機能したことによる体内の塩分濃度」ですね。それは血圧という結果となって表れます。
 
 
こんな研究があります。
 
慶応義塾大学医学部の伊藤裕教授が、塩分の多い食事を与えたラットに、正常な食塩量の食事を食べさせたラットの腎臓を移植しました。
 
すると、高食塩群のラットでも血圧値が元に戻ったのです。
 
 
これはつまり、腎臓が「体内のナトリウム量はこれくらい」と記憶していたと考えられるのです。
 
移植先の食塩過多ラットの体内ナトリウム量を、記憶している正常食塩量ラットのナトリウム量にまで減らしたのです。そのため血圧が下がったというわけです。
 
 
また、学童期にあたるラットに塩分の多い食事を与え、人でいう30歳くらいまで育てました。
 
すると、それから普通の食事に戻しても、血圧はずっと高いままで下がらなかったのです。
 
以前の体内ナトリウム量の記憶が腎臓に残っているため、たとえ食事中のナトリウム量が減っても、体内には記憶しているナトリウム量をキープし、血圧が下がらなかったのでしょう。
 
 
これらの結果からわかるのは、
 
 
子供時代から大人になるまで、食生活などの習慣は臓器に記憶される可能性がある
 
 
ということです。
 
若い頃に塩からい食事を習慣にしていると、中年以降に薄味の食事にしても、しばらくは血圧が高い状態が続く、と考えられるのです。
 
薄味に替えても、記憶している若い頃のナトリウム量を腎臓がキープしてしまうわけですね。
 
 
ここまでは、いわば「悪い記憶」ばかりを紹介してきましたが、「良い記憶」も存在します。
 
オランダでは、人間の赤ちゃんで調査が行われています。
 
半年間低ナトリウムミルクで育てられた赤ちゃんは、15年経っても一様に血圧が低いのだそうです。
 
この場合、赤ちゃん時代の低めの体内塩分濃度を腎臓が記憶していて、15年後もそれをキープしているのです。
 
 
「薄味にしても血圧に変化はない」という説も最近は聞かれるようになりましたが、健康問題は血圧に限った話ではありません。
 
 
がんや糖尿病に関わる「記憶」も、どこかの臓器に残っているかもしれないのです。
 
「生活習慣は体のどこかに記憶される」点は意識しておいて損はないはずです。
 
 
先の伊藤教授によると、この「記憶」は書き換えが可能なのだそうです。「悪い記憶」であっても、良い生活習慣を続ければ「良い記憶」に変わるのです。
 
伊藤教授によると、生活習慣病が気になり始める40代くらいまでなら、その書き換えが「ギリギリ間に合う」のだそうです。
 
これ以降になると、たとえ良い習慣を始めても、それまでの「悪い記憶」があるので生活習慣病発症のリスクは下がりにくいのです。
 
 
先に紹介したように、メモリー作業は赤ちゃんの頃から始まっています。
 
将来の健康を左右すると考えれば、子供時代の習慣も決しておろそかにできないのです。
 
 
このコンテンツは「週刊文春」2015年11月26日号142~143ページを参考にしました。
 

コメントを残す